フットボールチャンネル

マンU、スールシャールは実に弱気だった。エメリの打つ手を上回れず、ジェンガの如く崩れた今季の結末【EL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

選手を信じ過ぎたスールシャール



 基本的に守備を重視して積極的に動いたエメリ監督に対し、スールシャール監督はこの日もほとんど動かなかった。最初に交代を行ったのは、疲労も十分に溜まっているであろう100分のことである。

 ラッシュフォードは明らかに精彩を欠いていた。同点弾はこの男のシュートがキッカケだが、その他の場面ではほとんどチャンスに絡むことができていなかった。それでも、スールシャール監督は彼を使い続けている。ただ、背番号10を長い時間使い続けたことに意味があったのかは、疑問に思うところである。サイドの強度を高めた相手に対し、彼のパフォーマンスレベルは 一向に“変わらなかった”のだから。

 交代を機にサイドの運動量が上がったビジャレアルは延長戦に入り再び前へ出ることができていたが、ユナイテッドはそうではなく、早い段階からスールシャール監督はPK戦を睨んでいた。だからこそ2回目以降の交代は115分、116分、122分という時間。つまり、途中出場の選手に万全な状態でPKを蹴ってもらうためだけだった。決して強気なベンチワークとは言えない。

 そして、PK戦では11-10で敗北。結果的にという形にはなるが、スールシャール監督のプランは正しくなかったということになる。もっと早くに勝負に出ることもできたはずだが、相手が次々と選手を送り出し守備強度を高める中、スールシャール監督は頑なにスタメン選手の力を信じ続けた。しかしそれは、何の解決策にもならなかったのだ。

 試合後、クラブOBのリオ・ファーディナンド氏は「今季のユナイテッドは個の力に頼ってきた」と古巣を評価した。ビジャレアル戦はまさに、個の力以上に期待できる部分が何一つなかった。

 戦術がないわけではないはずだが、相手の用いた策を上回るものを試合の中で準備できない。スールシャール監督の課題がここにあるということは、ずっと言ってきた。同指揮官の下でタイトルがあまり期待できない大きな理由でもある。

 最後の最後で今シーズン積み上げてきたものがジェンガの如く崩れたユナイテッド。無冠という現実は、重く受け止めなければならない。

(文:小澤祐作)

【了】

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top