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Jリーグ 3年前

J2トップのサッカーの正体とは? “異端のアナリスト”が暴く京都サンガF.C.【データアナリストの眼力(1)】

text by 庄司悟 photo by Getty Images

“異端のアナリスト”庄司悟は6/7発売の『フットボール批評issue32』で、第10節までの数値をもとにJ2全22クラブのコンセプトを「一枚の絵」にした。今回は批評32の続編として、チョウ・キジェ監督が率いる京都サンガF.C.が実践する究極の「エコ・フットボール」の正体を全3回で暴いてみせた。今回は第1回。(文:庄司悟)

上位組で唯一の? チョウ・キジェ監督の狙いは…

図1
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 まずは今シーズンのJ2第17節終了時点におけるパス成功率(縦軸)×正味時間(横軸)の座標軸(図1)を見ていただきたい。上位1~6位の6クラブ中5クラブが右上のゾーンに位置している。要するに、プレー時間をなるべく継続しながら、パスの精度にもこだわった「サッカークラブらしいサッカークラブ」が上位を占めているわけだ。

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 一方で、ブラウブリッツ秋田と栃木SCは上位組とはソーシャルディスタンス以上の間隔を取り、左下ゾーンの最深部にひっそりと籠っている。これは、プレーをなるべく続けることなく、なおかつ一か八かのギャンブル的なパスが多い証拠であろう。秋田と栃木のコンセプトをサッカー界における「劣等生」と呼ぶ気はサラサラないが、徐々に順位を落としているのは気になるところではある。

 その秋田と栃木以上に異彩を放っているのが、J2第17節終了時点で2位につける京都サンガF.C.である。京都は第6節以降、9勝3分けで12試合無敗、さらに10試合がクリーンシート。早いうちに結果を示して人心掌握していくチョウ・キジェ監督のマネジメントはさすがのひと言である。

 では、座標軸の位置はというと、上位組では唯一、左下のゾーンにポツンと佇んでいる。大雑把に片付けてしまえば、京都の志向は「秋田・栃木型」と括ることは可能だ。ただ、ここまでの京都の変遷を辿るとそうとも言えない。

(文:庄司悟)

庄司悟(しょうじ・さとる)
1952年1月20日生まれ。1974年の西ドイツW杯を現地で観戦し、1975年に渡独。ケルン体育大学サッカー専門科を経て、ドイツのデータ配信会社『IMPIRE』(現在はSportec Solutionsに社名を変更し、ブンデスリーガ公式データ、VARを担当)と提携。ゴールラインテクノロジー、トラッキングシステム、GPSの技術をもとに分析活動を開始

『フットボール批評issue32』

≪書籍概要≫
定価:1760円(本体1600円+税)

禁断の「脱J2魔境マニュアル」

我が国が誇る2部リーグ・J2は、「魔境」の2文字で片付けられて久しい。この「魔境」には2つの意味が込められていると考える。一つは「抜け出したいけど、抜け出せない」、もう一つは「抜け出したいけど、抜け出したくない気持ちも、ほんのちょっぴりある」。クラブの苦痛とサポーターの得体のしれない快楽が渾然一体となっているあやふやさこそ、J2を「魔境」の2文字で濁さざるをえない根源ではないだろうか。

1999年に創設されたJ2は今年で22年目を迎える。そろそろ、メスを入れることさえ許さなかった「魔境」を脱するためのマニュアル作りに着工してもよさそうな頃合いだろう。ポジショナルプレーとストーミングのどちらがJ2で有効か、そもそもJ2の勝ち方、J2の残留におけるメソッドはできないものなのか。このように考えている時点で、すでに我々も「魔境」に入り込んでいるのかもしれないが……。

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【了】

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