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U-24フランス代表エースの「日本愛」。恩師救う漢気で五輪参戦、左腕に刻まれたタトゥーは…【東京五輪】

text by 編集部 photo by Getty Images

アンドレ=ピエール・ジニャック
【写真:Getty Images】



 U-24日本代表は28日、東京五輪のグループステージ第3節でU-24フランス代表と対戦する。

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 ここまで1勝1敗と苦しむフランスを引っ張っているのは、キャプテンも務めるFWアンドレ=ピエール・ジニャックだ。現在35歳の元フランス代表ストライカーはオーバーエイジ枠で東京五輪に参戦している。

 U-24フランス代表は選手招集で大きな困難に直面した。50人の予備招集リストにはFWキリアン・ムバッペも含まれていたが、彼をはじめとした主力になりうる選手の大半は所属クラブに派遣を拒否されてしまった。そのため一度は発表された東京五輪出場メンバーからも多数の入れ替わりが起こった。

 そんな中、早い段階から東京五輪出場が可能と見られていたのがオーバーエイジ枠として予備招集リストに入っていたジニャックだった。フランス代表で36試合に出場した経歴を持つが、2016年11月以降は招集がなくEURO2020出場の可能性はほぼなし。メキシコの強豪ティグレスでプレーしていたのも後押しとなった。

 メキシコ版『アス』紙によれば、ティグレスのミゲル・エレーラ監督も「全ての選手がワールドカップ出場を夢見ている。FIFAのカレンダーに準拠した大会ではないとはいえ、五輪もワールドカップのようなもの。ジニャックは五輪出場を夢見ているし、彼の名前が(U-24フランス代表の)最終リストにあれば、喜んでチャンスを与える」と東京五輪出場を容認。今夏ティグレス加入が決まったフランス代表FWフロリアン・トヴァンとともに、五輪参戦が叶った。

 ジニャックは「五輪は自分が唯一出場したことのない大会」だとして参戦を望んだが、東京行きを決めるにあたって、もう1つ重要な要素があった。それはシルヴァン・リポル監督の存在だ。

 リポル監督は2003年から2014年にかけてフランスのロリアンでアシスタントコーチを務めており、同クラブでプロデビューを飾ったジニャックにとっては恩師にあたる。自らの師が窮地に立たされている状況で、何とか力になりたいと漢気を見せた。

 実際、指揮官からジニャックへの信頼は絶大で、U-24フランス代表ではキャプテンマークを託されている。グループステージ2試合を終えた段階でハットトリックを含む4得点を挙げており、非常に高いモチベーションとともに衰え知らずの得点力を発揮。エースの大活躍によって2試合で7失点している不安定な守備陣も救われていることだろう。

 そして、グループステージの対戦国もジニャックにとって思い入れの深い国ばかりだ。

 2015年からプレーしているメキシコに対しては「もう1つの故郷」と語るほどで、大会前の公式記者会見では「自分はフランス人であるとともに、メキシコ人であるとも感じている。メキシコ生まれの子どももいる」と愛着を口にしていた。

 グループステージ初戦のU-24メキシコ代表戦ではPKで得点した後、大きく喜びを表すことなく謝罪するようなポーズが話題にもなった。

 28日に対戦する日本に対しても特別な感情を抱いていることだろう。記者会見で自らのタトゥーについて問われると、ジニャックは「僕は日本のマンガのビッグファンなんだ」と自慢げに左腕を見せた。そこには『キャプテン翼』の大空翼と日向小次郎のタトゥーが刻まれ、すぐ横には『ドラゴンボール』の孫悟空も彫られていた。

「オラに元気を可能な限りわけてくれ!」とばかりに味方からボールを集め、日向小次郎のごとき豪快なシュートをたたき込み、大空翼のようにチームを勝利に導く。フランスをけん引する“キャプテン・ジニャック”は、日本にとって極めて厄介な存在となるに違いない。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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