フットボールチャンネル

中山雄太が日本代表で描く理想の選手像とは? 「現代サッカーのトレンド」を追い求めた先には…【W杯アジア最終予選】

text by 編集部 photo by Getty Images

中山雄太
【写真:Getty Images】



 東京五輪が8月に閉幕し、これまでU-24日本代表として戦っていた選手たちが本格的に日本代表の競争に加わることになる。

【今シーズンの欧州サッカーはDAZNで!
いつでもどこでも簡単視聴。1ヶ月無料お試し実施中】


 すでにA代表での経験を持つ選手たちは、生き残りをかけての激しい競争に晒されるだろう。カタールワールドカップのアジア最終予選では、勝ちを重ねることの重要性だけでなく、1年後の本大会に向けた個々のサバイバルという意味合いも無視できない。

 U-24日本代表ではピッチ内外で中心選手だったDF中山雄太は、A代表だと追いかける立場に。ベスト4に終わった東京五輪の後、すぐオランダに戻り、所属するPECズウォレで公式戦をこなして日本代表活動に合流した。

「もちろん五輪の結果は悔しいものがありましたけど、僕自身、あっち(オランダ)でシーズンは始まっていて、悔しさを感じる間もなく切り替えないといけなかった。どちらかというと、悔しさが、今となってはエネルギーになっているかなと思っています」

 ズウォレでは先月末のヴィレムII戦で今季初出場を果たし、セントラルMFとしてプレーした。一方、日本代表では東京五輪と同じ左サイドバック起用が濃厚で、偉大な先輩であるDF長友佑都と競争することになりそうだ。

 これまで左サイドバックとしての経験は浅かったものの、東京五輪の経験によって自信をつかんだ中山は、自らの将来像をより明確に描けるようになっているという。

「サイドバックとボランチがオプションで、僕自身はどちらでもやれると思っています。センターバックというオプションはなくなってくるかなと思っているので、本当にクリアな状態で考えられていますし、(ヨシュア・)キミッヒ選手なんかは、バイエルン・ミュンヘンでボランチをやりながら、ドイツ代表では右サイドバックをやっていた。

そういう選手もいるとイメージがつきやすいですし、僕の中ではサイドバックとボランチを両立するのは現代サッカーのトレンドになってきていると思うので、逆に言えばそこに挑戦できて、楽しみな気持ちでやれているかなと思います」

 ドイツ代表のヨシュア・キミッヒは、もともとセントラルMFとして評価されてきた選手だったが、バイエルンでペップ・グアルディオラ監督に右サイドバックへコンバートされて急成長。いまでは中盤でもディフェンスラインでも世界最高峰のプレーヤーという評価を確立している、現代サッカーの申し子のような存在だ。

 卓越したリーダーシップを備えるという意味でも、キミッヒは理想的なロールモデルになりうる。利き足こそ違えど、中山の目指す将来像は、まさに“日本のキミッヒ”なのである。

「東京五輪では、試合を重ねるごとに成長しながら先に進みたかった。そこが土台としてあったので、自分はこの状況の時にどうしたらいいかというのがだんだん積み上げられてきて、自分のサイドバックとしての課題だったり、逆に言えば強みもわかってきた。すごくいいマインドでできているかなと思っています」

 中山は「単純に長友(佑都)選手のような縦の推進力は僕の課題」だと認識している。サイドバックとしての経験が浅く、これまで中央でプレーしてきた選手だけに、ドリブルやオーバーラップでサイドを縦に破るようなプレーの選択肢が少ないのは、ある意味自然なこと。実際、東京五輪では試合を重ねるごとに攻撃時のボールへの関わり方はかなり洗練されていて、これからの伸びしろは十分に感じられた。

 一方で「自分が出たら、まずはゲームを落ち着かせられると思っていますし、今僕が行くべきなのか、行かないべきなのか、外でプレーすればいいのか、中でプレーすればいいのか、相手にとって常につかみづらい状況を作れるのかなと思います」と、セントラルMFとしても振る舞える柔軟なポジショニングを自身の強みと認識している。

「気持ちとしては、オマーン戦に出場できなかったことは悔しいですし、まだまだ自分の力不足で、信頼を勝ち取れていないと思う。そこは自分自身に矢印を向けて、どうやったら試合に出られるのか、どうやったら(日本代表に)貢献できるのかを常に考えて行動していきたいなと思います」

 思い描くプレーのイメージに、これまでに感じてきた悔しい気持ちを乗せ、ピッチ上でどんな形にして表現できるか。チームが苦境にある今、少ないチャンスでも自分の強みを生かして勝利に貢献できれば、中山の進む先には明るい未来が拓けてくるはずだ。

(取材・文:舩木渉)

【了】

KANZENからのお知らせ

scroll top