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ミランの勢いは最高潮。それでも…大したことなかったアトレティコになぜ負けたのか【欧州CL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

流れを変えたたった一つのプレー



 29分、フランク・ケシエがマルコス・ジョレンテにアフターチャージを見舞い、これを見たジュネイト・チャキル主審はイエローカードを提示した。ケシエはこれがこの日2枚目の警告。退場となった。

 ミランにとっては危ない場面でもなく、すでにイエロー1枚を受けていたことを考えれば、M・ジョレンテに対しそこまで強くいく必要はなかったように思う。ケシエのプレーは冷静さを欠いた軽率なものだったと言わざるを得ない。

「(レッドカードの後)我々はまだ始まってもいないゲームに参加し始めた」

 ディエゴ・シメオネ監督が試合後にそう話した通り、数的優位を得たアトレティコは当然前への意識を強めた。前半のうちにキーラン・トリッピアーを下げてジョアン・フェリックスを投入し、さらに後半に入るとヤニック・フェレイラ・カラスコ、コケ、マリオ・エルモソ、ジョフレー・コンドグビアを下げ、ロドリゴ・デ・パウル、レナン・ロディ、アントワーヌ・グリーズマン、トマ・レマルをピッチへ。堅守が自慢のチームとは思えぬほど、超攻撃的な布陣となっていた。

 それに対しミランは、神がかっていたフィカヨ・トモリを中心に自陣へドン引き。もはやこうなると戦術どうこうではなく、ミランが耐えるかアトレティコがこじ開けるかの単純明快な戦いとなっていた。

 ミランは非常に良く奮闘していた。肝心なところでパスがズレるなどアトレティコの攻撃が思ったほど脅威ではなかったのは事実だが、最後に身体を張り、GKマイク・メニャンも安定したセーブを見せるなど、なかなか得点を与えることはなかった。

 しかし、30分という早い時間から数的不利な状況で戦っていたミランにも、流石に限界が訪れる。84分、ロディが頭でペナルティーエリア中央へボールを送ると、最後はグリーズマンがボレーシュート。強烈な一撃がゴールネットに突き刺さり、サン・シーロは静まり返った。

 そして、ここまで懸命に戦っていたミランを嘲笑うかのように、不運が襲う。

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