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【写真:田中伸弥】




日本代表の練習と準備の質が歓喜への道しるべに


【日本 2-0 オーストラリア カタールW杯アジア最終予選】

 サッカー日本代表は24日、カタールワールドカップアジア最終予選のオーストラリア代表戦に2-0で勝利を収めた。そして、1試合を残して悲願のワールドカップ出場権獲得を成し遂げた。



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 オーストラリア戦に向けて全員揃っての練習ができたのは、前日の1時間のみ。多くの選手が欧州から1日かけての移動を強いられ、ピッチ上でのトレーニングはごく限られた時間しかできなかった。

 それでも勝てた理由は、選手たちの練習や準備の質の高さにあったのかもしれない。試合後のインタビューでMF守田英正は「前日練習でうまくボールが回らなくて、守備側がうまくボールをカットすることが多かったので、試合前に(田中)碧と(遠藤)航くんと話しました」と明かした。

 前日練習は冒頭15分間のみが報道陣に公開され、残り45分間は非公開になる。その45分間では対戦相手を想定したゲーム形式のメニューやセットプレーの確認が行われるのが慣例だ。今回の日本代表も例に漏れず、十分な人数を揃えて相手の対策や自分たちの戦術を確認できたのは、この非公開になった時間帯だけだった。

 GK権田修一は「いやあもう、練習は大変ですよ」と述べ、実際の練習がどんな雰囲気なのかについても言及した。

「正直、前日練習である程度スタメンなどが見えてくる中で、『自分がスタメンじゃないんだな』と思った選手は、相手の並びに合わせてプレーすることもある。たぶんいろいろな思いがあると思うんですけど、その中でも本当に全力でやってくれます。

みんな、いろいろな思いを持って代表活動に集まっているんですよね。今回も23人じゃないので、実際に代表に呼ばれても、(ベンチ入りの)メンバーから外れてしまう選手もいる。そういう中で、本当に日本のよさだなと思うのが、誰一人として『俺、試合に出ないんだったらもう練習もやりません』みたいな選手がいなくて、個人の成長や、チームが勝つために全員が同じ方向を向いてやれていることです」

 報道陣に公開される試合翌日の練習などでも、日本代表選手たちのチームに尽くそうとする真摯な姿勢は十分に伝わってくる。試合で出番のなかった選手を中心に行うミニゲームも、公式戦さながらの強度で、終わった時にはみんなヘトヘトだ。しかし、権田によれば前日練習はそれ以上だという。

「前日練習、正直一番大変なんですよね(笑)。ゲームよりも前日練習の方が押し込まれるし、ゲームより前日練習の方がピンチも多くて、チャンスができなかったり。それは日本のよさですし、普段所属クラブでも感じますけど、紅白戦でうまくいかないくらいの方がちょうどいいというか。

紅白戦で相手が本当に熱量を持っていいプレーをしてきて、それを崩せない、それにやられてしまうチーム状態の方が、もしかしたらいいのかなと。『スタメン組はもっと頑張れよ』と思う人もいるかもしれないですけど、チームは11人じゃないので」

 練習の強度や質の高さは「途中から誰が入ってきても、『絶対にチームにプラスになるな』と感じられる要因の1つ」とも権田は言う。今年2月に埼玉で行われたサウジアラビア代表戦の前日練習も、選手たちの大きな声や体のぶつかり合う音まで記者控え室に聞こえてくるほど。音だけで「いい練習をしているな」と推察できるのが、日本代表の練習なのである。

 コンディショニングに関しても、彼らはプロ中のプロだ。2日前にチームに合流して、前日しかピッチで練習できない状況だろうと、意地でも100%に限りなく近いコンディションを作ってピッチに立つ。

 それだけではない。ピッチで練習する時間が限られるなら、ピッチ外でのコミュニケーション量を増やして試合に向けたチームの共通意識を持つために努力を惜しまない。森保一監督は、昨年11月にアウェイで戦ったベトナム代表戦前に海外組の選手たちを乗せたチャーター機の到着が大幅に遅れた際のエピソードを挙げて、次のように話す。

「(ベトナムへの)移動の時に(途中経由地での)給油で選手の合流が遅れた時には、選手たちが機内で自分たちでどうやって戦っていこうかと話してくれていました。最初にベトナムに入ってきた選手たちも、自分たちでやるべきことを共有し、遅れて入ってくる選手たちとコミュニケーションをとって意思統一してくれようとしたことが結果につながったかなと思います」

 極めて難しい状態で挑んだ試合でベトナム代表に1-0で勝利し、日本代表はワールドカップ出場権獲得に向けて望みをつないだ。予想外のトラブルに影響されて準備が足りなければ、オーストラリア戦でカタール行きの切符をつかみ取れなかったかもしれない。

「(各シリーズの)初戦に向けて練習で合わせられるのは1回だけ。みんなが集まってミーティングできるのは2日間。その中でコンセプト映像を作って、できるだけ選手たちが意思統一をできるように、(同じ)画を持って試合に臨めるように準備してきました。

でも、一番のポイントは、選手たちが自分たちの目標を定めて、目の前の一戦に出し切って戦うためにコミュニケーションを取って、どうやったら試合に勝てるのかというイメージを共有しようと主体的にやってくれたことだと思います」

 森保監督とスタッフ陣は代表活動開始前から選手たちに映像を共有し、「クラブから代表活動にスイッチを入れ替えてもらえるような働きかけ」をしてきたとも語る。限られた時間を最大限に有効活用するための取り組みが、ワールドカップ出場という成果として実った。

「オーストラリアに集まってくれた選手とスタッフが試合に向けて最善の準備をしてくれ、そして全力を出し切って試合に臨んでくれた結果が、この試合の勝利。ワールドカップ出場のチケットをつかみ取れたのは、ここにいる選手・スタッフだけではなくて、日本代表への思いを持って努力してくれた選手、そしてこれまでチームが立ち上がって、代表の道を繋げてくれた選手たち(のおかげ)。本来はもっと多くの選手たちがここにいてもいい、そしていろいろなスタッフがここにいてもいいと思っています」

 試合後の記者会見で、森保監督はベンチ前で組んだ円陣の中で話した内容を明かしつつ、日本代表のために尽力してきた選手やスタッフたちの貢献を称えた。この代表チームで主力を担うようになった選手たちも、組織としての総合力の高まりとともに競争の激化を実感している。

 昨年10月のオーストラリア戦から主力に定着したMF田中碧は次のように語った。

「クオリティの高い選手がたくさんいますし、僕自身はこうやって試合に出させてもらっていますけど、誰がスタメンで出てもおかしくないような力はあるなと思いますし、だからこそ自分も試合に出た時に勝たなきゃいけないなという気持ちになります。

自分が少しでも悪ければ代わるなというのはわかるので、そういう意味では本当に競争はすごく激しい。もちろん次の試合があって、自分が出られないことも全然あると思いますし、何があるかわからないですけど、そのクオリティの高い選手たちと一緒にやれていることがこのチームの強さなんじゃないかと思います」

 中盤でともにプレーした守田も「最後の10分でヒーローが1人(三笘薫)に絞られましたけど、みんながヒーローだと思います」とチームに関わる全員が一致団結してのワールドカップ出場権獲得を誇っていた。

 日本代表がカタールワールドカップのアジア予選を突破する過程で積み上げてきたカルチャーは、成果として表れ始めている。練習と準備の質がチーム力向上と予選突破の鍵だったと言ってもいいのではないだろうか。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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