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「できることは何もない」。マンチェスター・ユナイテッド、絶望的な引き分けで浮き彫りになる問題とは?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 本田千尋 photo by Getty Images

歴史あるクラブとしての矜持を保てるか



 66分の同点ゴールこそ、このポルトガル代表MFから生まれたものだった。ボックスの手前からシュートを放ち、敵のGKシュマイケルに一度は防がれたボールをフレッジが詰めた。しかし、それ以外の場面では、前線から降りてゲームを作るフェルナンデスによって攻撃が活性化したところはなかった。端的に言ってしまうと、0トップが開けた前方のスペースを他の選手たちが有効に活用することができなかった。

 良くも悪くも、チームの状態とは無関係に得点力を発揮するロナウドのコンディションに問題がなかったとしたら、レスター戦の痛恨のドローは避けられたかもしれない。

 トッテナム戦でハットトリックを決めたように、ポルトガル代表の主将の個の爆発力は、むしろチームが窮地に陥った時にこそ際立ってくる。しかし、だからこそチームは“ロナウド依存”に陥ってしまう傾向もありのが厄介な所だ。その結果、組織の秩序の整備が後手に回ってしまい、このレスター戦のようなロナウドが不在の試合で、そのマンUの問題が浮き彫りになってしまうのではないか。

 つまり、明確な組織が存在せず、チームとしての性格がはっきりしないというマンUの問題が根底に残り続けているからこそ、レスター戦は痛恨のドローに終わったのだろう。

 もちろん、どんなフットボールのチームも、明確な組織が存在し、性格がはっきりしているわけではない。オリジナリティ溢れるスタイルをピッチ上に示すことができるチームは、CLでも上位を目指せるクラブに限られてくる。しかし、本来のマンチェスター・ユナイテッドは、常に欧州の頂点を狙うクラブではなかったか。

 今季の残り8試合で、チームの組織としての機能が劇的に向上するとは考えにくい。だが、欧州最高峰の伝統を持つクラブとしての矜持は、ピッチ上に示すべきだろう。特に、リバプール、アーセナル、チェルシーといったライバルとのビッグマッチにおいては――。

(文:本田千尋)

【了】

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