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これがオランダ代表のやり方か。アフリカ最強セネガル代表を追い詰めた方法【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 加藤健一 photo by Getty Images

セネガル代表の長所を消す戦法


 オランダ代表は両ウイングバックとボランチがボールを受けに来るが、前を向かせてもらえない。セネガル代表は両ウイングが外へのパスコースを切りながら3バックの両サイドにアプローチし、ダブルボランチはオランダ代表のダブルボランチから自由を奪った。

 この試合における両チームの共通点は、ビルドアップからの攻撃に苦戦していたことにある。セネガル代表はハイプレスが効果的だったが、オランダ代表の守備の枚数が整ってしまうと、ウイングの仕掛けしか攻め手が無くなる。

 そこでオランダ代表は修正を施す。右WBだったデンゼル・ダンフリースを高い位置に上げ、後ろを4枚にしてビルドアップを開始する。これによって相手のファーストディフェンスをかいくぐり、敵陣までボールを運べるようになった。

 セネガル代表の中盤はボール奪取能力に長けた3人が並ぶ。オランダ代表は2トップに楔のパスを入れるが、CBカリドゥ・クリバリは執拗なマークで自由を与えず、こぼれたところを中盤が回収してカウンターに繋げる。オランダ代表は高い位置で奪おうとせず、即時奪回のプレッシングも機能していないので、余計に間延びしていた。

 しかし、オランダ代表にとってはそれも織り込み済みだったのだろう。セネガル代表がスピード感あふれる攻撃を仕掛けても、5バックなので枚数は揃っていた。即時奪回をするのではなく、リトリートすることでカウンターの威力を吸収していた。

 もちろん、この対応にはGKの活躍も不可欠だった。アンドリース・ノペルトはこの大舞台の初戦が代表デビューだったが、落ち着いた振舞いと素晴らしい堅実なセービングでチームを助けていた。

 オランダ代表は相手の長所を消すことで試合をこう着状態に持ち込んだ。そして、じわじわと追い詰めたうえで最後の一刺しをした。

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