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サッカーの「主旋律」とは何か?「ライセンス不要」監督の頭の中を覗く「異端のアナリスト」の視点

text by 石沢鉄平

サッカーの「主旋律」を探し出す日々



――それで、書籍の「はじめに」でも書いているように、最初から「主旋律」を知っている作曲者はズルい、というわけですね。

「そう。で、『主旋律』を見つけ出すことの大変さを痛感しているときに、ネット検索で引っ掛かったのが、声優(三石琴乃)が歌っている『私のたまごやき』という曲だった。もうこれを聴いたときは、ハンマーで殴られたような衝撃を受けた。『この子は凄い』と。もちろん、伴奏はあるんだけど、肉声だけで、要するに1つの五線譜だけで、『交響曲第7番』の第4楽章の『主旋律』を見つけ出していた。この曲と出会ってから、講演する際にはアバド指揮版、クレンペラー指揮版、マゼール指揮版と合わせて、『主旋律』とは何たるかを知ってもらうために、『私のたまごやき』を必ず流すようになった」

――なるほど。確かに彼女の「パッパラフニフニ」というフレーズはいまだ脳裏に焼き付いています(笑)。これがきっかけで、庄司さんの、サッカーの「主旋律」を探し出す日々が始まったんですね。

「そこからはサッカーの監督の頭の中、奏でようとしている『主旋律』を見つけたいと思うようになっていった。それもシンプルに『一枚の絵』で。あなたが奏でたい『主旋律』は自分にはこのような『一枚の絵』に映りましたが……と、まさに当てつけのようにね(笑)」

――ただ、その「一枚の絵」を監督に見せると、「庄司さんはライセンスを持っていない。机上の空論ではないですか?」と言われることがあると聞きました。

「今もしょっちゅうあるよ。ただ、そういうときは以下のように言うことにしている。『私はピッチに立つ必要はありません。なぜなら監督の頭の中を覗いていますから。同じレベルのライセンスはいりません。なぜならこちらもS級(庄司級)を持っていますから』と」

プロフィール

庄司悟(しょうじ・さとる)
1952年1月20日生まれ、東京都出身。1974年の西ドイツ・ワールドカップを現地で観戦し1975年に渡独。ケルン体育大学サッカー専門科を経て、ドイツのレコード配信会社IMPIRE(現Sportec Solutions、ブンデスリーガの公式データ、VARを担当)と提携し、ゴールラインテクノロジー、トラッキングシステム、GPSをもとに分析活動を開始。著書に『サッカーは「システム」では勝てない データがもたらす新戦略時代』(ベスト新書)。

書籍情報『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』

定価:本体1800円+税

“異端のアナリスト”庄司悟はこれまでピッチ上で起こる様々な「主旋律」を、誰もが一目でわかる「一枚の絵」で表してきた。「2軸」「非対称」「皿と団子」「同期・連動」「連動→連鎖→連結→連続」「志・智・儀」といった“異端用語”を駆使しながら、ペップ・グアルディオラ、ユルゲン・クロップ、ユリアン・ナーゲルスマン、ハンス=ディーター・フリックたちが標榜する世界最先端の現代サッカーを「一枚の絵」で明らかにする。

詳細はこちら

【了】

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