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Jリーグ 1年前

高校サッカー選手権“私的” ベストマッチ5選。激闘、名将対決…。記憶に刻まれた名勝負を厳選

text by 土屋雅史 photo by Getty Images

富山第一対星稜 別の道を歩んだ2人のドラマ


【写真:Getty Images】

第92回大会(2013年度)決勝
富山第一 3-2(延長) 星稜

 旧・国立競技場で開催された最後の選手権。「国立最蹴章」と銘打たれ、例年以上の注目を集めたファイナルのカードは、富山県代表の富山第一高校と石川県代表の星稜高校が対峙する、史上初の北信越勢対決。

 どちらが勝っても初優勝というフレッシュな顔合わせは、前半34分にキャプテンの寺村介がPKを決めて星稜が先制。後半にも追加点を奪って2点をリードしたが、試合は残り3分から一気にその色彩を変えていく。87分に高波奨のゴールで富山第一が1点差に迫ると、後半のアディショナルタイムに星稜の森下洋平が富山第一の竹澤昂樹をエリア内で倒してしまい、主審はPKのジャッジを下す。

 実は森下と竹澤は中学時代のチームメイト。別々の高校を選んだ2人の交錯が、さらなるドラマを巻き起こす。キッカーはキャプテンの大塚翔。富山第一を率いる大塚一朗監督の次男だ。スポットに立つ息子。祈るような視線をピッチに向ける父親。力強く蹴り込んだボールが、ゴールネットへ到達する。土俵際から生き返った富山第一の決勝ゴールは、延長後半終了直前の109分。村井和樹が豪快なボレーを叩き込み、奇跡的な逆転劇の末に優勝旗は初めて富山へと渡る。

 大会後、番組のロケで学校を訪れた際、グラウンドにはリヴァプールのホーム・アンフィールドにあるレリーフを模した、『THIS IS TOMIICHI』というエンブレムが掲げられていた。僕らは決して1人ではない。愛と勇気の日本一。「国立最蹴章」は高校サッカー史に残る名勝負で締め括られた。


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