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柔軟なマンCと頑固なアーセナル。一枚上手だったグアルディオラ監督の采配とは?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

頑固だったアルテタ


【写真:Getty Images】



 一方、かつてペップの下でアシスタントコーチを務めていたミケル・アルテタ監督は、なかなか重い腰を上げなかった。

 シティはアーセナルの強度の高いプレスを攻略する手段として、ポゼッションを捨ててシンプルにアーリング・ハーランドに対してロングボールを入れるなど、柔軟性も見せたが、アルテタ率いるアーセナルは選手交代後によりシティの強度が高まった中でも一貫して最終ラインから繋ぐサッカーをやめなかった。

 その理由の一つには、アーセナルの最前線に君臨するエディ・エンケティアの存在があったのかもしれない。エンケティアは相手ディフェンスの背後を突く動きは得意だが、アカンジやルベン・ディアスら屈強なCB相手ではロングボールを収めることが計算しづらい。

 これが落下地点の予測能力が際立っているガブリエウ・ジェズスだった場合は、戦い方が変わっていた可能性もある。従来の12節にこのカードが行われていたとしたらブラジル代表FWがスタメンに名を連ねていた可能性が高く、そう言った意味でも冒頭に述べた通り、アーセナルからすると戦うタイミングが悪かった。

 また、今節アルテタが最初に交代カードを切ったのは勝ち越しゴールを献上した後の76分だった。アーセナルの後半最初のシュートは83分と、66分に冨安が右サイドから惜しいクロスを上げたシーン以外ではほとんどチャンスらしいチャンスを作れていなかったが、攻撃陣のテコ入れを勝ち越されるまで行わなかった。それはスタメン起用した選手に対しての絶大な信頼があるとも捉えられるが、今節のような大一番では後手に回ってしまうと取り返しのつかないことになってしまう。

 アルテタの“頑固さ”は大一番になればなるほど露呈している印象がある。昨季の最終盤トッテナム戦でも引き分け以上で終われば、自分たちがUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得の可能性が高かった試合でも、勝ちにいったことで相手にカウンターでひっくり返されて0-3の大敗。そして結果としてCL出場権を逃した。

 前節までは6戦連続で同じスタメンと、主力の“固定化”の傾向も著しく、一部の選手のみ疲労感が蓄積している状況だ。3月からUEFAヨーロッパリーグ(EL)決勝トーナメントが始まるが、こうした過密日程を乗り切ってリーグ優勝をするためには、メンバーを入れ替えながら戦うなどの”柔軟性”も必要となってくるだろう。

(文:安洋一郎)

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