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【ニューカッスルの快進撃エピソード0】「クラブから出て行け!」嫌われ者、応援ボイコット、降格…。苦境に現れた1人の女性

シリーズ:ニューカッスルの快進撃 text by WASSY photo by Getty Images

サポーターを激怒させたオーナーの行動


【写真:Getty Images】



 この一件以降、幾度となく売却の話が持ち上がりつつも、真剣な取引相手と話が進展したかと思えば、実現目前で要求額を釣り上げて破談となるなど、“売る売る詐欺”が繰り返され、毎年のように持ち上がる買収の噂にファンは一喜一憂した。

 不安定な状況に置かれたニューカッスルは2009年と2016年に2度の降格を経験したが、2部にしては豪華な陣容を揃えて、すぐに昇格を達成できたのは不幸中の幸いと言えるかもしれない。

 アシュリーにとってクラブは、自身の経営する企業のロゴを世界中に発信するツールになっており、宣伝効果の高いプレミアリーグで戦う意義が大きかった。逆に言えば、昇格後も決して野心的なプランが示される事はなく、あくまで目標はプレミアリーグというステータスを維持すること。欧州大会に出場できたのは12/13シーズンのヨーロッパリーグのみで、いつしかボトムハーフが定位置となってしまった。

 成績が出ない事はもちろんだが、ピッチ外でのアシュリーの振る舞いもサポーターを怒らせた。

 2011年には本拠地セント・ジェームズ・パークの名称が、アシュリーが経営するスポーツショップの名前を冠した“スポーツダイレクト・アリーナ”に変更された。1892年のクラブ創設以来のホームに集まるサポーターにとっては、まさに屈辱的な行為であった。企業が料金を支払って名称権を購入するのが通例だが、この時は大口スポンサーを探すための試験的な名称変更という扱いで、クラブに一銭も支払われなかったため、火に油を注いだ。

 新戦力補強がないまま移籍市場が閉幕した翌日、アシュリーが9000万ポンド(約144億円)を支払ってイギリス大手百貨店「ハウス・オブ・フレイザー」を買収したとのニュースも飛び込んだ。スター選手ではなくデパートを買ってしまったのだから、ファンが怒るのも無理はない。当時のラファエル・ベニテス監督もチームの連敗中に「自信はデパートでは買えない」と発言し話題を呼んだ。

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