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【ニューカッスルの快進撃エピソード1】歓喜と安堵。“嫌われ者”オーナー最後の大仕事とは? オーナー交代の一部始終

シリーズ:ニューカッスルの快進撃 text by WASSY photo by Getty Images

ニューカッスルの魅力とポテンシャル



 ニューカッスルはフットボールリーグが発足して間もない20世紀初頭に黄金期を迎えた、“古豪”の名に相応しい歴史がある。最後のトップリーグ優勝は1927年と100年近く前に遡るが、その後も50年代にFAカップを3度制するなどの実績があり、90年代から2000年代前半にもアラン・シアラーらスター選手を揃えて優勝争いを繰り広げていた。

 またロンドン、バーミンガム、マンチェスターやリバプールといった都市とは違い、ニューカッスル・アポン・タイン近郊には大きなクラブが1つしかない。2部にいた16/17シーズンですらホーム戦平均5万人以上がスタジアムを訪れていたというデータが示す通り、イングランド北東部では地域密着型のクラブとして圧倒的な集客力を誇っている。

 少し離れた隣町に行けばライバルクラブの名門サンダーランドがあるが、ここ数年は下部リーグに低迷しており、以前ほどの存在感は無くなってしまった。育成組織とスカウト網を充実させれば、この地域の有望な若手選手を囲い込むこともできるだろう。

 ファンの間にオイルマネーに対する嫌悪感がそこまで大きくなかったことも、サウジアラビア側からすれば都合が良かった。今やフットボールクラブが売りに出されると必ずと言っていいほど噂になる中東国家の参入だが、それに抵抗を感じる人も現地には多い。その点、ニューカッスルでは前オーナーが嫌われすぎており、売却さえ実現すれば次の代表が誰でもよい、というような風潮すらあった。

 ビッグ6と呼ばれる強豪クラブにチャレンジする土壌が整っており、なおかつオーナーが売却交渉に前向きなクラブとなると、自ずと選択肢は限られていたわけだ。

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