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【ニューカッスルの快進撃エピソード1】歓喜と安堵。“嫌われ者”オーナー最後の大仕事とは? オーナー交代の一部始終

シリーズ:ニューカッスルの快進撃 text by WASSY photo by Getty Images

本当の戦いはここからだった



 ところが、待てど暮らせどリーグ側からの審査結果が届かない。サウジPIFが国家とは切り離された独立した団体であるか否か、また同国に蔓延る人権問題、そしてプレミアリーグを含めたスポーツコンテンツの違法視聴問題などが障壁となり、リーグ側は慎重な姿勢を示していた。

 ネガティブなニュースをスポーツイベントによって掻き消す“スポーツウォッシング”の危険性を唱える人権団体や、サウジアラビア政府との関係性を重要視するボリス・ジョンソン首相など様々なステークホルダーがこの問題に首を突っ込む中、気づけば1年以上が経過。その間にもチームはスティーブ・ブルース監督の下で残留争いに巻き込まれており、もしも降格すれば売却話が白紙に戻るというのでは、という別の懸念もあった。

 最終的にオーナー交代が実現したのは、ステーブリーがセント・ジェームズ・パークで初めて試合を観戦した日から4年後の2021年10月だった。両者が合意に至ってから1年半が経過しており、売却のプロセスに関わった多くの人々が胸を撫で下ろしたことだろう。

 この買収の実現に前オーナーのアシュリーが大きく貢献したことは特筆すべき点だ。スポーツクラブとしての成功に導くことはできなかったが、それまで赤字経営だったクラブの財務状況を健全化させた功績は大きい。彼自身にとっては利鞘を増やすことが目的だったかもしれないが、結果的にクラブとファンにとってもメリットのある取引を実現させたのだから、その点は評価されるべきである。決して良いオーナーではなかったかもしれないが、ビジネスマンとしては優秀だったというわけだ。

 こうして世界でもトップレベルの資金力を誇るクラブとなったニューカッスルだが、買収完了時点で3分4敗の17位に沈んでおり、降格が現実味を帯びている状況。新経営陣にとって、本当の戦いが幕を開けた。

(文:WASSY)

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【了】

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