サッカー人生が大きく変わる一冊
1人でICE(ドイツの新幹線)に4時間乗り、ライプツィヒに向かった。そこでドイツ人のエージェントと食事、その後練習参加するクラブのGMとミーティングを行った。会話はドイツ語を英語に訳してもらい、なんとか理解できる状況だった。
次の日に練習参加し、同じようにドイツ語を英語に訳してもらいメニューを消化。昼に4人のチームメイトとのランチに出かけたが、内3人は英語が通じず、そこでも英語を話せる選手に通訳をお願いした。
また、次のチームでは練習試合に参加したもの前日の夜から雪が多く積もり、ピッチには雪が多く残る中でプレーした。言葉も満足に通じない中で、サッカーでしか自らを証明するものがなく、まさに「生きる力」が問われた 。
筆者の場合は、給料未払いやチーム内での感染症の流行など、過酷な環境下で0からエージェントとクラブを探し、海外で計5年もプレーした。そういった筆者の思考、行動力には圧倒される。
そして何より本書には、それぞれのクラブでの出来事、それに対する筆者の思考、行動が詳細に記されていて、まるで隣でクラブを巡ったような感覚になる。
私はいつ本書を読むかで、その後のサッカー人生が大きく変わることを確信している。様々なサッカー本があるが、情熱的かつロジカルに経験や教訓がまとめられている本は他にはない。
現役のプロサッカー選手、そしてこれからプロサッカー選手を目指す学生、生徒の皆さんのみならず、我が子を応援する親御さんや指導者の方にもぜひ読んでいただきたい。ピッチ内外の華やかな部分ばかりクローズアップされるが、見えない部分でどれだけの苦労や現実があるか、そしてその中でどうやって「生きる力」を発揮するか。そのリアルな声を聴くことができる。
(文:岡田優希)
『サッカー本大賞2023 授賞式』の配信日時、視聴方法が決定!
『フットボーラー独学術 生きる力を自ら養う技法』
(カンゼン:刊)
著者:柴村直弥
定価:1,870円(本体1,700円+税)
頁数:336頁
岡田優希(おかだ・ゆうき)
1996年5月13日生まれ、神奈川県出身。18歳まで川崎フロンターレの育成組織に所属し、同期の三好康児や板倉滉とプレー。早稲田大学を経て2019年にFC町田ゼルビアに加入して3シーズン在籍。2022シーズンはテゲバジャーロ宮崎、2023シーズンはギラヴァンツ北九州でプレーする。
【了】