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アーセナルへの期待は不安を上回るが…。開幕節が思い出させる昨季の悪夢とは【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 竹内快 photo by Getty Images

アーセナルの不安を上回る期待



 もちろん、「負け」を土壇場の同点弾で「引き分け」に持ち込み、勝点1を拾うことは非常に重要である。実際、前述した第32節ではリーグ最下位だったサウサンプトンに87分まで1-3の状況だった。88分、90分と立て続けにゴールを決め、劇的な展開で「負け」を「引き分け」に持ち込んだ。しかしアーセナルがやってのけた奇跡的な引き分けは、アーセナルがやられる側にまわる可能性だってある。すなわち、フォレストにだって「負け」を「引き分け」に持ち込む同点弾を決めるチャンスはあるのだ。

 その意味で、相手に何もさせず力でねじ伏せることができなかったのは悔やまれるところだ。アウォニィの得点によりフォレストが勢いづき、アーセナルが昨季サウサンプトン相手にやったように試合終了間際でドローに持ち込まれる可能性もあった。エランガのスピードとドリブルは非常に素晴らしいものだったが、カウンターの対処にはまだまだ改善の余地があると言えそうだ。

 先制し得点を重ね、クリーンシートで試合を終わらせる。ハイレベルなイングランドの地で頂点を取るためには「負けない力」ではなく「勝ちきる力」、「逃げきる力」をもつことが必要だ。

 それでも開幕戦に求められる最優先タスクは、勝利することである。まずは昨季同様シーズン初戦を勝利できたことが重要だ。

 冨安、サリバが完璧な状態に戻ってきてくれたといってよいプレーを見せてくれた。ティンバーが負傷してしまったものの、開幕戦で生まれた不安と期待を天秤にかければ、間違いなく期待が不安を上回る。コミュニティ・シールドから2連勝できたことはチームの状態が非常に良いことを示している。

 夏には大型補強を敢行し、スカッドの層の厚さは過去一番のレベルにある。期待値は非常に高いが、その期待に応えていけるだけの最高のメンバーが揃っているのも確かだ。若い監督の下で個性豊かな若者たちと熟練の職人たちが合わさり、魅力的なフットボールを展開するアーセナル。若いチームは今シーズンも私たちの日常に熱狂を届けてくれるだろう。

(文:竹内快)

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