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海外サッカー 8か月前

徹底した「型」。アーセナル大勝、PSVの守備を崩壊させた方法とは?【欧州CL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

アーセナルの徹底した狙い



 アーセナルのストロングポイントはサカとマルティン・ウーデゴール、ベン・ホワイトのトライアングルだ。オンザボールでもオフザボールでもこの3人は好連係を見せている。

 先制点の場面では、右のボックス外から中に仕掛けたサカがデストとジョーイ・フェールマンを釘付けにしてマイナス方向へパス。この時、マイナスの位置にいたウーデゴールとオレクサンドル・ジンチェンコは共にフリーであり、ノルウェー代表が放った強烈なシュートのこぼれ球をサカが押し込んで決まった。

 敢えてフリーの位置でボールを待ったウーデゴールと相手を引きつけたサカ、そしてPSVの守備対応の曖昧さによって生まれた得点だった。

 2点目が決まる前の11分にもほぼ同じような形があった。サカが独力でデストを突破すると、相手の視線を引きつけてマイナスのウーデゴールへとパス。ノルウェー代表DFは右の大外を駆け上がったホワイトへと絶妙なスルーパスを送って、そこからの折り返しからあわやゴールという決定機を演出した。

 20分のゴールもガブリエウ・ジェズスがおとりとなる裏への抜け出しによって生まれたマイナスのスペースに走り込んだレアンドロ・トサールがゴールを記録。70分のウーデゴールのゴールシーンでも、リース・ネルソンを3人で囲んだことで、アーセナルの主将がフリーとなり、余裕を持った状況でミドルシュートを叩き込んでいる。

 ウーデゴールのようなファイナルサードでクオリティの高いシュートとパスを選択できる選手を何度もフリーにさせるのはPSVからすれば自滅行為に近い。逆にアーセナルは“引きつけてからのマイナス“というのを徹底したことで、4ゴールの快勝へと繋がった。

 早々にゴールを奪ったことで後半は、週末のノースロンドンダービーに向けて主力を温存することにも成功。7季ぶりのCL初戦は完璧な試合展開となったと言えるのではないだろうか。

(文:安洋一郎)

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