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冨安健洋は「ただの守備的SB」を超えた。アーセナルの問題をどう解決したのか?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 竹内快 photo by Getty Images

閉塞感漂うアーセナルの攻撃を変えた男



この試合のジンチェンコはスターリングを警戒するあまり、通常よりも中央に入っていく動きが少なく、普段のようなビルドアップへの貢献も皆無。これにMFデクラン・ライスの最終ライン手前までボールを貰いに下りてくる悪癖が合わさって、一時アーセナルは[5-1-4](ライスが最終ラインに入り、MFジョルジーニョだけがミドルサードにいる状況)という前線と最終ラインの“分断”が生まれてしまう。

後方の人数が増え、重心が後ろ寄りとなったことで攻撃陣は孤立。ケガから復帰したエースの右WGブカヨ・サカはチェルシーの左SBマルク・ククレジャの守備に苦しみ、普段はアーセナル最強の槍である右サイドからの攻撃は鳴りを潜めた。

 そんな“閉塞感”漂う試合展開をがらりと好転させ、チームに貴重な勝ち点1をもたらした影の功労者が日本代表DF冨安健洋だ。

 24歳の日本代表は後半スタートのタイミングでジンチェンコに代わり左SBに入ると、体を張った守備でスターリングを苦しめる。CBが前から潰しにいく守備をする際に背後のスペースをカバーする動きも流石の一言。スターリングを使ったチェルシーのサイド攻撃はシャットアウトされた。

 しかしここまでは守備力に定評がある冨安なら想定通り。同選手の活躍はこれだけに留まらない。

 中央に絞りボランチのようにプレーする「偽サイドバック」の役割を完璧にこなすことができ、前半のジンチェンコには見られなかったポジショニングの良さが光った。中央でプレーすれば必然的に相手のプレッシャーも強まるが、パス成功率は驚異の100%(データサイト『SofaScore』参照)を記録。両足を遜色なく使える強みが最大限生かされたと言えるだろう。64分には左WGガブリエウ・マルティネッリに完璧なワンタッチパスを供給し、左サイドからチャンスを作り出した。

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