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冨安健洋は「ただの守備的SB」を超えた。アーセナルの問題をどう解決したのか?【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 竹内快 photo by Getty Images

冨安健洋が生む好循環



 そんな冨安の好プレーがアーセナルの攻撃に好循環を生んでいく。右SBを務めていたベン・ホワイトは守備に安心感がある冨安が中盤に加わったことで完全開放。心置きなく自身の前方でプレーするサカのサポートに行くことができ、右サイドの攻撃が息を吹き返す。

 サカ相手に好守備を見せていたククレジャは、ホワイトも意識せざるを得なくなり、サカが前を向いて仕掛けられるシーンが増加。84分の左WGレアンドロ・トロサールの同点ゴールは、ホワイトがオーバーラップしてきたタイミングで、サカが逆サイドに完璧なロングパスを供給したことで生まれている。

 このように守備と攻撃の両局面で問題が起きていた難しい状況を冨安は1人で解決した。後半に生まれた2得点に冨安は直接関与していないが、冨安が入ったことで戻ってきた“いつも通りのアーセナル”が作り出した2得点と言って良いだろう。

 これまでの冨安は対戦チームの強力なウインガー対策として、または試合を終わらせるクローザーとして起用されてきたために、「守備的なSB」といった印象が強かった。

 しかし最大の強みである守備だけでなく、正確な状況判断力、パス精度の高さを持っていることをビッグマッチで改めて証明した冨安はもはやただの守備的SBではない。思えば、前節のマンチェスター・シティ戦でもタイミングを見計らって駆け上がり劇的勝ち越し弾の起点となっていた。足元の技術ではMF仕込みのスキルを持つジンチェンコに軍配が上がるが、最近のパフォーマンスを見れば総合力で冨安がジンチェンコを上回っていると分かったはずだ。

 次の試合、ミケル・アルテタ監督が左SBに選ぶのは誰なのか。冨安健洋が先発起用される条件はすべて整っている。

(文:竹内快)

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