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久保建英がピッチに起こす変化。「あらゆる罠」をもかいくぐる技の連続【CL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

久保建英1人でベンフィカの守備陣を…

久保建英
【写真:Getty Images】



 メリーノの先制ゴールのシーンでは、久保がショートコーナーのリターンを受けると、ドリブルで右サイド深い位置まで侵入。この時久保が引き連れていたのはアンヘル・ディ・マリア、R・シルバ、ジョアン・ネベスの3人だったが、うまくボールを隠しながら運んだことで失うことなく、後方でフリーになっていたバレネチェアにパスをつなげている。

 ボックス内でフリーの状態でボールを受けたバレネチェアは、ファーサイドの状況をしっかりと確認した上で、余裕を持ってクロスを放り込むことができた。これは弾かれたものの、こぼれを拾ったアイエン・ムニョスのシュートに反応したメリーノが頭で押し込んでいる。ゴール前のイレギュラーを引き起こしたという意味で、久保のキープからのつなぎは大きなポイントとなった。

 続いてバレネチェアの3点目のシーンでは、右サイドでボールを持った久保がカットインし、やはりディ・マリア、アウルスネス、フロレンティーノ・ルイスの3人を引き連れた。これにより、バイタルエリアでメリーノとブライス・メンデスが浮いた状態となり、久保はメリーノにパスを出した。

 この時点でベンフィカは久保のいる右サイドに人数をかけていたため、左サイドではバレネチェアがフリーに。メリーノはそこを見逃さず、パスをつないでいる。ボールを受けたバレネチェアに対しては右WBのJ・ネベスが慌ててプレッシャーにいったが、ソシエダの背番号7はその勢いを利用した切り返しでかわし、ファーサイドへ見事なシュートを流し込んでいる。

 ベンフィカのそもそもの守備構造に問題があったのは間違いないが、久保をかなり警戒していたのも事実。しかし、久保が驚異のキープ力を見せたことで、結果としてベンフィカは奪いきれないどころか、同選手に人数をかけていたために全体にズレと不用意なスペースが生まれてしまった。つまり、久保1人にボールを持たれただけで、ピッチの状況を大きく変えざるを得なかったということになる。

 ソシエダの地元紙『Noticias de Gipuzkoa』は3点目のシーンについて「久保は(アシストした)メリーノを守るために仕組まれたあらゆる罠から抜け出した」と振り返っていた。「あらゆる罠」をものともしないスペシャルな存在が組織のバランスを崩すのだろう。久保はそれを証明した。

(文:小澤祐作)

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