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トッテナムで信頼を掴んだポステコグルー采配。英国でも変わらぬ決断力と試練【コラム後編】

シリーズ:コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

活気を取り戻した魅力的なサッカー

【写真:Getty Images】



 早い段階でチームの戦術が浸透したことや、ポステコグルー流のマネジメントでトッテナムに活気が戻った。

 早くも彼の代名詞でもある超攻撃的なフットボールはサポーターたちに受け入れられており、モウリーニョやヌーノ・エスピリト・サント、コンテ時代の退屈なサッカーから脱却することに成功した。

 サポーターからの信頼を得る上で重要となったのが、アーセナルとの第6節だ。コンテが率いた約1年前のアウェイでのノースロンドンダービーでは、1-3のビハインドを負っている状況で迎えた71分にソン・フンミン、リシャルリソン、イバン・ペリシッチ、クレマン・ラングレをベンチに下げて、ビスマ、ダビンソン・サンチェス、ライアン・セセニョン、マット・ドハーティを投入していた。

 コンテはこの“ダービー”の意味を理解していなかったのだろうか。いわば“降参”とも捉えることができる、負けている状況で攻撃的な選手をベンチに下げて、守備的な選手を投入した采配にはサポーターからは不満の声が続出した。

 一方のポステコグルーはアーセナルに対して屈することは絶対にしなかった。2度のビハインドを追いつき、アウェイで勝ち点を持ち帰った。トッテナムにとって、エミレーツ・スタジアムでのリーグ戦は直近30試合で1勝11分け18敗と鬼門の地であり、そこで最後まで諦めない姿勢をみせたことで、一気にサポーターの信頼を掴んだ。

 さらにサポーターとの絆が強固となったのが第11節チェルシー戦だ。この試合では2人の退場者を出したことで9人での戦いを余儀なくされたが、最後まで勝利を諦めずに前からプレッシャーをかけ、ハイラインも維持して自分たちのスタイルを貫いた。結果的に1-4で敗れ、今季初黒星を喫してしまったが、ホームのサポーターは勝利をした時と同じように『Oh When The Spurs』を歌い、選手たちの健闘を讃えた。

 このような光景は近年のトッテナムでは見られなかったものだ。まさにトッテナム・ホットスパー・スタジアムに活気が戻った瞬間だった。

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