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躍進の理由は? アストン・ヴィラを蘇らせたエメリ監督の手腕。壮大なプロジェクトとアーセナルとは正反対の環境【コラム】

シリーズ:編集部フォーカス text by 安洋一郎 photo by Getty Images

アーセナルでエメリが成功できなかった理由


【写真:Getty Images】

 18年夏にエメリはアーセン・ヴェンゲルの後任としてアーセナルの監督に就任した。

 約22年間監督を務めたカリスマ的指揮官の後任は誰であっても難しい。マンチェスター・ユナイテッドでも似たようなケースがあり、ファーガソンからデイビッド・モイーズに引き継いだ際に苦労している。

 特にアーセナルのような規模感のクラブでは、ピッチ内での結果はもちろん、ピッチ外での仕事も多く、ビッグクラブならではの “政治力”が求められる場面が多い。“戦術オタク“としても知られるエメリは各試合にだけ集中したかったのだが、そうはいかなかった。本人も「ヴェンゲルの後を引き継ぐという意味で、アーセナルは難しい場所だった」と苦戦を認めている。

 彼の性格がアーセナルに合わなかったことに加えて、当時のアーセナルはフロントが不安定だった。

 エメリを監督に招聘した当時のCEO(最高責任者)イバン・ガジディスはすぐにチームを去り、同じく招聘に関わったスカウト責任者のスヴェン・ミスリンタットも2018/19シーズン途中に退団。カジディスの後任に就いたラウール・サンジェイやスカウト部長を務めたフランシス・キャギガオ、契約交渉担当のフス・ファミーらも1年、もしくは2年で退任をするなど、クラブの内部が激しく入れ替わっていた時期だった。

 クラブの上層部が変われば、方向性が変わるのも必然的。この激動の時代に結果を残すのは誰でも難しかっただろう。

 さらに当時の補強はエメリではなく、クラブが主導権を握っていた。そのため彼が欲しい選手ではない選手が加入することもあった。

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