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躍進の理由は? アストン・ヴィラを蘇らせたエメリ監督の手腕。壮大なプロジェクトとアーセナルとは正反対の環境【コラム】

シリーズ:編集部フォーカス text by 安洋一郎 photo by Getty Images

エメリにとって理想の仕事場


【写真:Getty Images】



 昨季、エメリは就任当時15位だったアストン・ヴィラを最終的に7位まで押し上げ、UEFAカンファレンスリーグ(UECL)の出場権を獲得したことで、オーナーのナセフ・サウィリス氏とウェズ・イーデンスから絶大な信頼を得た。

 その結果、クラブは23年夏に体制を再構築。クラブの最大の意思決定者であったCEOのクリスティアン・パースロー氏は同職の廃止に伴い退任し、スペイン人指揮官が仕事しやすい環境とするために、オーナーに次ぐ権限を持つ形に変更した。オーナーは直接的にクラブの経営に関わらないため、実質的にエメリが現場の意思決定者となっている。

 そのためフロント主導の補強がなく、エメリが必要とする選手しかチームにやってこない。今夏に獲得したパウ・トーレスやムサ・ディアビ、ユーリ・ティーレマンス、ニコロ・ザニオーロ、クレマン・ラングレは全て彼が欲した選手たちだった。セビージャからモンチ、レアル・ベティスからアルベルト・ベニートら優秀なテクニカル・ディレクターやスカウト陣らが今夏に加入したのも、エメリが働きやすくするための一環の人事だった。

 実質的な現場のトップになったエメリには、本来であれば監督業以外にも多数の業務が生じるが、これは彼の個人アシスタントで、体制変更でフットボール部門のディレクターに就任したダミアン・ビダガニーが行っている。そのためエメリは、朝から晩までトレーニング施設に籠り、チームトレーニングやミーティング、次節の分析など、フットボールに100%集中することができている。

 アーセナル時代に苦戦した理由でもある「フットボール以外での業務」と「フロントのサポート不足」がアストン・ヴィラでは全く存在しないのだ。加えて英語も当時と比べて大幅に上達した。現在は通訳を介することはほとんどない。

 まさにエメリにとって理想の仕事場だと言えるだろう。

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