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高校サッカー 3か月前

近江高校監督が明かす快進撃を支えた“秘密兵器”。高校サッカー選手権準優勝。青森山田のセットプレーを封じた綿密な計画とは

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Naoto Fujie

白熱するミーティング。“ラスボス”青森山田の対策


「青森山田のコーナーキックに対しては、いつもゾーンを担当していた一番身長の高い選手が小泉選手にマンツーマンでついて、競ったボールをゾーンの選手が弾く、という形を意識していました」

 近江で身長の一番高い選手とは183cmのFW小山真尋。小泉から自由を奪う作戦は奏功し、前半でともに3本ずつを与えたコーナーキックと直接フリーキックではチャンスを作らせなかった。

 ならば、青森山田の代名詞であるロングスローに対しては、どのような対策を立てていたのか。タッチラインからファーポスト付近まで飛ばす青森山田の2年生ロングスロワー、左サイドバックの小沼蒼珠の脅威を把握した上で、肉を切らせて骨を断つ作戦で臨んだと西村が続ける。

「いつもならば、相手のロングスローに対してはゾーン役が1枚と、あとはマンツーマンの形で守ってきました。マンツーマンでは相手のターゲットが1枚ならば2枚、2枚ならば4枚といった形で挟んでいたんですけど、小泉選手にはあえて1枚だけをつけてゾーン役を2人にしました。小泉選手にはもうボールに触られる想定のなかで、触られた後にゾーンのどちらかが弾く感じです。結果としてセットプレーからは失点していないので、そこは上手くいったんじゃないかと思っています」

 ハーフタイムに小山がベンチへ下がった後も、近江のロングスロー対策は変わらなかった。後半は170cmのボランチ西飛勇吾が主に小泉につき、182cmと小山に次ぐ高さの西村は引き続きゾーン役を担った。高さで圧倒的に劣る西は、とにかく小泉から自由を奪う密着マークを完遂。前半に2本、後半には3本を数えた青森山田のロングスローから最後までチャンスを作らせなかった。

 近江ではキャプテンと副キャプテンを除いた全部員を、分析を含めて7つを数える班に所属させている。それぞれの班ではリーダーが指名され、毎週月曜日の昼休みにはミーティングを実施。前田監督とともに前週の振り返りと、月曜日から始まる日々への方向性を確認し合う。

 入学直後から分析班に所属し、2年生の途中からは分析班のリーダーを務めてきた西村は、年間を通じた仕事内容を熟知しているからこそ感謝の思いを捧げている。

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