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高校サッカー 3か月前

近江高校監督が明かす快進撃を支えた“秘密兵器”。高校サッカー選手権準優勝。青森山田のセットプレーを封じた綿密な計画とは

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Naoto Fujie

第102回全国高校サッカー選手権大会 最新ニュース

1月8日に幕を閉じた第102回全国高校サッカー選手権大会で、3度目の出場となった近江高校(滋賀)は、初の決勝進出という快挙を成し遂げた。快進撃を支えたのは、同校サッカー部のうち20名ほどが所属する分析班。前田高孝監督は、彼らに託した仕事の内容と意図を明かしてくれた。(取材・文:藤江直人)


立て続けに行われるミーティング「安パイだけはやめよう」

近江高校サッカー部の前田高孝監督
【写真:藤江直人】

 公式戦を翌日に控えた近江高校の午後は慌ただしい。記憶と記録に残る快進撃を演じた先の全国高校サッカー選手権大会を例に挙げれば、スタッフ陣も加わった全体ミーティングから選手だけのミーティングを経て、セットプレーだけをテーマにすえたミーティングが夕食前に立て続けに行われた。

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 しかも、最後のセットプレーミーティングに参加するのは実はわずか3人。大出一平ゴールキーパーコーチに2年生守護神の山崎晃輝、そして副キャプテンのセンターバックの西村想大。特に青森山田との決勝を翌日に控えた、1月7日のミーティングはテーマが難解だった。

 近江を率いる前田高孝監督は、近江兄弟社中学時代の同級生で、全幅の信頼を置いている大出キーパーコーチに「頼むな。相手はセットプレーお化けやから」と声をかけ、対策を一任したと明かす。

「セットプレーを極力与えないのが僕の仕事であり、与えてしまった後は大出の仕事という形でした。ただ、僕が最後に言ったのは『相手が強いからと言って、安パイを切るのだけはやめよう』と。安パイというか、要は『これならベターだろう、という手段を講じることだけはやめよう。もう0か100かでいい。失敗するかもしれないけど、これじゃないと防げないという形でいこう』と。最後の責任は監督である僕が取るので、その上で『何となく、といった弱気な一手じゃなくて強気の一手というか、やったことがないかもしれないけど、これなら絶対に守れる形を考えてほしい』という話をしました」

 必然的にミーティングは白熱した。コーチと選手間のディスカッションと言い換えてもいい。言うまでもなく近江が獲得したセットプレーよりも、青森山田が獲得したそれへの対策に時間が割かれた。そして山崎も西村も、事前に青森山田の試合映像を自分たちなりの角度からチェックしていた。

 山崎と西村が見た試合の映像は、実は首脳陣が用意したものではない。チーム内の分析班に所属する部員たちが撮影し、テーマやシーンに合わせて切り取った上で、サッカー部として導入している映像分析ツールの『SPLYZA Teams』で共有。そこへタグ付けや描き込みなどが施されたものだ。

 実際にどのようなセットプレー対策を講じて、選手たちが異口同音に「ラスボス」と位置づけた青森山田戦に臨んだのか。相手の最大の脅威は190cmの長身を誇るセンターバックの小泉佳絃。西村は「ちょっとゾーン気味にするなど、いつもの守り方とは変えていました」と舞台裏を明かす。

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