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日本代表 3か月前

“8年の冬”で危機感から恐怖心へ…なでしこジャパンが1つになった瞬間。守護神が下した大胆な決断とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

ビッグセーブの裏にあった大胆な決断



 左利きのDF遠藤純、そして昨夏の女子ワールドカップで得点王を獲得した宮澤ひなたがともに怪我で招集外になった今回の最終予選。左サイドで縦のコンビを構築していた2人の不在は、第1戦でも大きな影を落としていた。

 一転して第2戦では左足から良質なボールを供給する北川と、WEリーグの得点ランキングでトップに立つ上野の高い技術と、前線で誰とでもコンビを組める能力が合致。前線からのプレスを含めて走り回るフィールドプレイヤーたちの背中に、山下も「私の自信にもなった」と喜んだ。

 もっとも、山下が勇気づけられただけではない。あわや同点の大ピンチを救った、前半終了間際に飛び出した守護神のビッグセーブもまた、なでしこジャパンにかかわる全員を奮い立たせた。

 右サイドのスローインからペナルティーエリア内へ侵入された直後。FWリ・ハクが体を強引に捻りながらマイナス方向へ放ったパスを、走り込んできたMFチェ・クムオクが高橋を背負いながら両足の間にまずボールを通し、次の瞬間、右足のヒールで意表を突くシュートを放った。

 北朝鮮と対戦する上で、山下と守備陣との間にはある約束ごとが設けられていた。

「クロスに対してはニアから、人を潰すように行ってね、と言っていました。相手は第1戦から、必ずニアにパワーを持って入ってきていたので」

 しかし、この場面ではニアに侵入してきたリ・ハクに、DF南萌華が背後から押さえにいきながら反転を許し、さらにマイナスのパスを股間に通されてしまった。そして、目の前でチェ・クムオクと高橋が競り合おうかという刹那に、山下は大胆な決断を下している。

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