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日本代表 3か月前

“8年の冬”で危機感から恐怖心へ…なでしこジャパンが1つになった瞬間。守護神が下した大胆な決断とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

突如訪れた転換点「世間的にはあまりよくないイメージみたいなものがありますけど…」



 首位に立つINAC神戸は3日に敵地・浦和駒場スタジアムで、勝ち点1ポイント差で追走してくる2位の浦和レッズレディースとの首位攻防戦に臨む。山下と高橋が今度は敵・味方で対峙するのを前に、今週に入ってINAC神戸は経営権の譲渡、いわゆる身売りという大きな転換点を迎えた。

 クラブが設立された2001年11月からオーナー企業を務めてきたアスコグループから、同じ神戸市内に本社を置く産業廃棄物処理の大手、大栄環境へ発行済の全株式が1日付で譲渡される決定事項は、山下や北川、FW田中美南の代表組へ2月26日の緊急会見前に連絡で知らされていた。

 本拠地やクラブ名称に変更はなく、監督や所属選手もそのまま残る契約に山下はこう言及した。

「何だか世間的にはあまりよくないイメージみたいなものがありますけど、実際にINACの選手にどうなっているのと聞いてみたら、まったく影響がない、といった感じでした」

 それぞれの所属チームで、個の力を高めていった先の7月26日にパリ五輪が開幕する。女子サッカーの出場国数は「12」で、昨夏に南半球のオーストラリアとニュージーランドで共催された女子ワールドカップの「32」と比べてはるかに少ない。すでに山下は5カ月後を見すえている。

「ワールドカップよりも出場チーム数が少ない分、メダルに届くチャンスは逆にあると思っています。何かいろいろなものを変に背負いすぎちゃうんですけど、自分はまだ何かを成し遂げたわけでもないし、まずはその場所に行かないと、世界で通用するかどうかも証明できないので」

 山下が言及した「その場所」とは、言うまでもなくパリ五輪の舞台を指す。アジア最終予選を戦った22人より4人も少ない、18人体制となるパリ五輪の代表入りへ。北朝鮮戦を前に山下が抱いていた恐怖心はいま、なでしこジャパンの守護神として生き残っていくための覚悟と決意に変わった。

(取材・文:藤江直人)

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【了】

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