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日本代表 3か月前

“8年の冬”で危機感から恐怖心へ…なでしこジャパンが1つになった瞬間。守護神が下した大胆な決断とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「1戦目の経験があったからこそできた」



「速いシュートがニアに来た場合はしょうがないと思いながら、それでも体の近くに来るシュートだけは止めよう、と。そういった体の向きは、1戦目の経験があったからこそできたと思います」

 チェ・クムオクのヒールでコースを変えられたシュートは、ファーへゆっくりと流れていく。ファーへの意識があったからこそ、懸命にボールを追いながらダイブし、最後は思い切り伸ばした右手でボールをかき出した。体は完全にゴール内へ流れたが、ボールはライン上に3分の1ほど残っていた。

 北朝鮮の選手たち、そしてベンチのリ・ユイル監督らがいっせいに抗議。DFウィ・ジョンシムにはイエローカードが提示されたなかで、もちろん判定はノーゴールのまま変わらなかった。

 迎えたハーフタイム。仲間から「ナイス」と声をかけられた山下は、なでしこを救ったスーパーセーブも忘れて、ペナルティーエリア内でシュートを打たれるまでの過程を問題視している。

「ああなってしまった展開の方をちょっと……スローインのところですね。そこはハーフタイムにみんなへ伝えました。最終的には後半に失点してしまったし、はなもインタビューで『自分の失点』と言っていましたけど、私にも判断ミスや、最終ラインをコントロールできなかった部分はあった。試合後もまたみんなで話し合いましたし、パリではそういうことをさせないようにしたい」

 ホームで演じた死闘の末につかみ取った2大会連続6度目の、自力では3大会ぶりとなる五輪出場権に笑顔を弾けさせてから一夜明けて、ヨーロッパ組の選手たちは続々と日本を後にしていった。一方で国内組も、ウインターブレイク中だった3年目のWEリーグが今週末から再開される。

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