フットボール批評オンライン

「そんな指示はオシム監督だけでした」ドリブラーの能力を最大化する味方の演出方法【特集:松井大輔のドリブル分析】

シリーズ:松井大輔のドリブル分析 text by 松井大輔 photo by Getty Images

味方は三笘薫をどうやってサポートすればいいか?



 シェフィールド・ユナイテッド戦では、三笘の突破を味方が阻害するといったシーン(0:40〜)がありましたので悪い例として紹介します。

 ハーフウェーラインより相手陣内に10m強ほど入ったところでボールを受けた三笘は、斜めにボールを運び出して相手を釣り出し、アウトサイドの細かいタッチと同時に回転して入れ替わるカラコレアルという技で1人目をかわします。しかし、縦に抜け出した三笘は2人目にファウルで止められてしまいました。相手を退場に追い込んだプレーなので成功例と思われがちですが、そもそもこれは三笘の型ではありません。

 なぜ、そうなってしまったのか。その要因は味方の動きにあります。三笘がボールを受けると同時にFWウェルベックが三笘の縦方向に広がっていた左サイドのスペースへ流れます。それによって、ウェルベックのマーカーだった相手も流れてきて、左サイドの局面は2対2になりました。仮にウェルベックが流れてこなければ、左サイドの局面は1対1で三笘が得意にする型ができる状況でした。

 三笘のカラコレアルは縦方向のスペースを埋められてしまったがために導かれたもので、感覚的に繰り出した技だと思います。突き詰められた自分の型ではなかったため、2人目までの対応を考えきれなかったのではないでしょうか。結果的にファウルになりましたが、本人としては失敗と感じているように思います。

1 2 3 4 5

KANZENからのお知らせ

scroll top