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Jリーグ 2週間前

武藤嘉紀はなぜオールラウンドな活躍ができるのか? 加速と減速を自在に操る上半身の使い方の秘訣【動作分析コラム】

シリーズ:動作分析コラム text by 三浦哲哉 photo by Getty Images

方向転換に必要な動作「沈むバネ」

 2023シーズンJ1第6節の京都サンガF.C.戦。右サイドからドリブルで内側に切れ込み相手選手をかわして大迫勇也にアシストした3点目のシーンは、方向転換でのキレ味の鋭さが顕著に現れたシーンになります。

【動画 京都サンガF.C.vsヴィッセル神戸】

参照元:YouTube

 このシーンは、スピードに乗ったドリブルから「チョップ」と呼ばれる、踵の内側で身体の後ろを通すフェイントで90度近く左側に切り返しています。

 武藤のようなトップレベルの選手の方向転換には、減速するタイミングで股関節を柔らかく使ってグッと沈み込むような動きが出現します。私は、このような上半身の重さを骨盤に乗せて重心を落としていくことによって生まれるバネ感のある動きを、「沈むバネ」と呼んでいます。

 減速〜方向転換の局面では、上半身の姿勢を保持し「膝を抜いて」股関節を曲げながら身体の前側に着地していくことで、コア・スタビリティと殿部や脚の筋群が協調して、身体の重さを上手く利用した効率の良いブレーキングが可能になります。

 方向転換が上手ではない選手は、この局面で背中が丸まり、股関節がスムーズに動かずに脚だけでバタバタしているようなロスの多い動きになってしまいがちです。

 対して、武藤は「沈むバネ」の質が高く、股関節の自由度が保たれているため、ステップをタタッと素早く刻んでスムーズに急減速し、上半身の向きを変えつつ方向転換のタイミングで外脚(右)に身体の重さを乗せてグッと加速しています。骨盤と連動して脚が前に素早く振り出されてくる動きになり、スムーズで鋭い切り返しが可能になるのです。

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