レジェンド・曽ヶ端準から受け取った言葉
今季の早川はここ一番のシュートセーブに関しては安心感を持って見ていられるし、攻撃の起点となるフィードにも長けている。中国戦では後者の方はやや物足りないところがあったが、全体的には高い評価を与えていい出来だったのではないか。
年代別代表経験がほぼなく、26歳になっていきなりA代表に抜擢されるというのはなかなかないケース。しかも彼の場合、横浜F・マリノスジュニアユースからユースに上がれず、桐蔭学園高校から明治大学を経て、2021年に鹿島入りするというエリートとはかけ離れたキャリアを過ごしてきた。
鹿島入り後も最初はクォン・スンテや沖悠哉という壁に阻まれ、出番を得られなかった。完全にレギュラーに定着したのは、プロ3年目の2023年から。かなりの遅咲きと言っていい。その分、さまざまな環境でより多彩な経験を積んできた。数々の修羅場もくぐってきたのだろう。そういった生きざまが大舞台での落ち着きや冷静さに表れていたのではないか。
「全部がトントン拍子にうまくいくとは思っていませんし、いろんなカテゴリーやいろんな環境でプレーできたからこそ、今の自分があると思っています。そこで培ったものを出しながらやっていくことで、自分が成長していけると信じて取り組んできました。
今回、代表に選ばれたのもそうですけど、そうすることで、自分の選んだ道を正解にしていける。そこは引き続き取り組んでいくだけですね」
実に地に足の着いた物言いをする早川。その堂々たる立ち振る舞いは、鹿島のレジェンドの1人である曽ヶ端準GKコーチ譲りかもしれない。曽ヶ端GKコーチも2002年の日韓ワールドカップ(W杯)筆頭に代表に名を連ねながら、ピッチに立てない苦労を味わってきたが、つねにブレることはなかった。
「曽ヶ端さんからはそういう苦労話はなくて、『いつも通り、頑張ってきて』『自分の持ってるものを出してくれ』と言われました。結果的にその言葉に応えられたのはよかったですね」と早川は嬉しそうに話したが、ここからは師事する先人のように本気で1年後の2026年に開催されるFIFAワールドカップ・北中米大会(W杯)を目指していくべきだ。
鈴木彩艶、大迫などライバルは少なくないが、今の早川なら十分チャンスはありそう。中国戦の理想的な代表デビューを大きなステップにしていくことが肝要である。
(取材・文:元川悦子【韓国】)
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