「だらだらと下がっていくのか」「これがラストチャンス」
「前日の練習で急遽、スタメン組に抜擢されて、これが自分にとってラストチャンスだと思いました。ここで自分のプレーを出せるかどうか、チームが勝つか負けるかで、今後のキャリアが決まる。上に上がれるのか、だらだらと下がっていくのか。本当に自分を奮い立たせてピッチに入りました」
この大一番で、対人の強さや配球面での持ち味を発揮し、チームも1-0で勝利。以後、西野はスタメン出場を続け、今ではチームに不可欠な存在に成長した。
そんな西野には今シーズンから始めた試合前の儀式がある。キックオフ直前に左胸のクラブエンブレムを軽く叩くのだ。
「ああいうのって“クサい”感じがして、元々は好きじゃなかったんですけど(笑)。でも試合前は緊張もありますし、コンサドーレの勝利のためという原点に立ち返る意味で気合を入れる儀式としてやっています。実際やってみたら、1発目からバチンとスイッチが入る感覚があったので」
札幌で生まれ育ち、札幌を愛するクラブのホープ、西野は現在21歳。自分のことだけを考えてもおかしくない年齢だが、長年お世話になるクラブへの想いに変化が生まれている。
「讃岐から帰った当初は、ただ自分のためだけに、札幌で試合に出るために必死にやっていました。でも今は、試合に出てチームを勝たせる存在にならなければと強く思っています。地元出身でアカデミー出身の自分が試合に出ることの意味も強く感じていて、育成年代の子たちの道標に自分がならなければと思うようになりました。
(岩政)大樹さんにも『奨太はチームを背負う選手にならなければいけない』と言われていて、状況に応じたプレーや落ち着かせる声掛けなど、もう1つ殻を破る時期に来ているんだと思っています」