「僕の苦しさを理解して…」訃報を聞き思い出す
西野は試合直前のルーティンに1つ、所作を加えた。胸元の札幌のエンブレムを2度、叩いた後、左上に巻いた喪章にそっと右手を添え、静かに空を見上げたのだ。
「モリさんに向けてです。体調がよくないのは聞いていましたし、それでも僕らの試合をいつも見てくれていたとも聞いていたので。少しでも恩返しできればと思っていましたし、絶対に勝利を届けたかったので。自分を奮い立たせる意味も込めて、喪章に触れさせてもらいました」
その2日前、北海道コンサドーレ札幌U-18で長年指揮をしてきた森下仁之氏の訃報が伝えられた。享年57歳。西野にとっては高校3年間を共に過ごした大切な恩師だった。
「訃報を聞いたとき、まず思い出したのは、自分がプロ入り後に苦しんで、ユースに戻って活動した時のことです。言葉数は少なかったけれど。僕の苦しさを理解して、自分にプレッシャーをかけないようにしてくれていたのが伝わっていました…その時のモリさんの温かさを真っ先に思い出しましたね」
森下氏の教えは西野の胸にしっかりと刻まれている。