
セレッソ大阪でプレーする香川真司【写真:Getty Images】
香川真司がPKで決勝点。チームの命運をかけた一撃はまるで、8年前の2018年ロシアワールドカップ(W杯)・コロンビア代表戦を彷彿とさせる。今季はベンチスタートが多いが、かつて世界の最前線で戦った男の闘志はまだまだ燃え盛っている。「今季も正直、不完全燃焼」と語る8番が目指す場所は、依然としてピッチの上だ。(取材・文:元川悦子)[2/2ページ]
「(波多野)豪がちょっと駆け引きしてきたんで…」

1度はPKを止めてみせた波多野豪【写真:Getty Images】
キッカーはもちろん香川。中島のPKセーブで勢いに乗る波多野を相手に蹴るのは重圧もあっただろうが、大舞台を知り尽くす大ベテランは動じることなく、ゴール左隅に強いキックを蹴り、勝負を決める3点目を奪ったのだ。
チームの命運がかかるPKという意味では、2018年ロシアワールドカップ(W杯)初戦・コロンビア戦の先制PKを彷彿させるものがあった。
それを本人にぶつけると「いやあ、やめてください」と照れ笑いを浮かべながら、「もちろんどの試合もPKは重圧がある。でもうまく冷静に決めたかなと思います」と安堵感を吐露した。
波多野がコースを読んでいたことについても「豪がちょっと駆け引きしてきたんで、自分は思い切って左に蹴ろうと。読まれようが、どっちにしろ入ればいいと思ったんで、最後に結果につながったのはよかった」と堂々とコメント。今季初ゴールでセレッソに90分勝利をもたらしたことに自信をのぞかせた。
この決勝点後の立ち振る舞いも特筆すべきものがあった。
香川はPKを決めた後、一目散にベンチに駆け寄り、ピッチの全員を集めてゆりかごダンスを披露。仲間の子供の誕生を祝ったのだ。
「僕はそういう人間じゃないんで」

決勝点をあげた香川真司と、祝福するチームメイト【写真:Getty Images】
「本当は2−1になった時、駿汰を呼んだんですけど、彼は気づいていなかった(苦笑)。だから自分が決めた瞬間はそれをやれたらいいなと思っていました」と背番号8は言う。
そういうアクションを起こすことでベンチを含めて一体感や結束力が高まると考えて、率先して号令をかけたのだろう。
2010年南アフリカW杯初戦・カメルーン戦でも、ベンチにいた中村憲剛が本田圭佑の先制点の後、ベンチに来るように呼びかけたことで歓喜の輪が生まれ、チームの士気が一気に上がった例があったが、今はまさに香川が中村憲剛の役割を担うようになったと言っていい。
「輪を大事にする?いや、僕はそういう人間じゃないんで」と香川は謙遜したが、「自分がセレッソを勝てる集団にしなければいけない」という思いは誰よりも強い。
こうした気配りの中に彼の姿勢が色濃く表れていた。
「自分はつねに出場機会に飢えているんで。今季も正直、不完全燃焼ですね」とも発言。16試合中先発6試合という現実を直視し、ここからスタメン奪回を狙っていく構えも見せた。
そのギラギラ感は若い選手たちのいい刺激になるはず。香川は37歳になっても向上心の塊なのだ。
セレッソはこの勝ち点3で暫定4位に浮上。首位・名古屋グランパスと3差に詰め寄り、WESTトップ浮上の可能性を残した。
しかも17日の次戦は名古屋との直接対決。残り2つを連勝することが重要だ。
そのためにも香川にはもっともっと貪欲に得点に迫り続けてほしいものである。
(取材・文:元川悦子)
【著者プロフィール:元川悦子】
1967年、長野県生まれ。94年からサッカー取材に携わり、ワールドカップは94年アメリカ大会から2022年カタール大会まで8回連続で現地に赴いた。「足で稼ぐ取材」がモットーで、日本代表は練習からコンスタントに追っている。著書に『U-22』(小学館)、『黄金世代』(スキージャーナル)、「いじらない育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(NHK出版)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)などがある。
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