
サッカー日本代表の中村敬斗【写真:田中伸弥】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)初戦で強豪オランダ代表と2-2で引き分け、貴重な勝ち点1を獲得した。その立役者の一人となったのが中村敬斗だ。守備で体を張りながら、劣勢の展開で貴重な同点ゴールを奪取。紆余曲折を経てたどり着いた世界最高峰の舞台で、背番号「13」は確かな存在感を示した。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
「前田選手と組むのは…」

W杯初戦のオランダ代表戦に臨んだサッカー日本代表【写真:田中伸弥】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)で史上最高成績となるベスト16超えを狙っている日本代表。その第一歩となるのが14日(日本時間15日)のオランダ代表戦だ。
決戦の地・ダラス・スタジアムには6万9285人の大観衆が終結。屋内競技場ということで約20度の快適な温度の中、大一番が行われた。
森保一監督は最終ラインに渡辺剛、谷口彰悟、伊藤洋輝という3月のイングランド代表戦と同じ3バックを起用。注目の左シャドーには、5月31日のアイスランド代表戦でスタメンだった伊東純也ではなく、前田大然を抜擢。ビルドアップに長けた相手にハイプレスをかけ、攻撃を寸断させる意図が見て取れた。
その前田と左サイドでコンビを組んだのが、中村敬斗だった。
「前田選手と組むのはそんなに多くなかったですけど、本当によく走ってくれるし、スプリントしてくれるし、縦にある程度、アバウトなボールが出ても追いつける」と背番号「13」は歓迎していた。
2人で連係しながら、相手右サイドバックのデンゼル・ダンフリースを中心とした右からの攻めを阻止するところから決戦に突入しようと試みた。
「今日に関しては攻撃よりも…」

サッカー日本代表FW中村敬斗【写真:Getty Images】
日本は開始早々の3分、左FWコーディ・ガクポからのパスを受けたドニエル・マレンにゴールを脅かされる。
マレンは巧みに前を向くと、反転から鋭いシュートを放った。これは完全に枠を捉えていたが、鈴木彩艶がスーパーセーブ。いきなり訪れたピンチを防ぎ、チームに活力を与えた。
その後もオランダ代表がボールを保持し、日本はミドルブロックを作って構える形が続いたが、中村は献身的な守備で応戦。ダンフリースとクリセンシオ・サマーフィルの2人が巧みなポジショニングで崩そうとしてくるところを体を張った守備で自由を与えなかった。
「今日に関しては攻撃よりもまず守備から入ることを意識していた」と本人はイングランド代表戦の時と同じ発言をしていたが、2か月半前よりも一層の凄まじい気迫を感じさせた。
両者スコアレスの中、背番号「13」に最初のビッグチャンスが訪れたのは28分。右サイドで堂安律がボールを持ち、左足で低いクロスを中へ配球。前田がワンタッチしたところに入りこんだのが中村だった。
彼は左足で切り返そうと試みるも、マークが2枚ついていたのを見るや、後ろの伊藤にパス。伊藤がロングシュートを放ったが、惜しくも枠を越えていった。中村としては、シュートに持ち込めなかったのが不完全燃焼だったに違いない。
その悔しさを晴らすべく、42分には右のポケットを取った渡辺からのマイナスのクロスに反応。思い切って右足を振りぬいたが、惜しくも枠の外へ。
「うわ、最悪だと…」

前半の決定機を逃したサッカー日本代表の中村敬斗【写真:Getty Images】
「トラップまでは完璧だったし、狙い通りだったんですけど、ちょっとしたズレだった」と本人は悔しさを滲ませた。
「(前半に)あれだけチャンスを外しちゃったんで、『うわ、最悪だ』と思ったんですけど、チャンスは絶対にあるというのは分かっていた」とも中村は語っており、貪欲に泥臭くゴールを狙い続けることで、必ず活路を見出せると信じて疑わなかったという。
前半は相手に支配率で26%も上回られながらも0−0。2022年カタールW杯のドイツ代表戦やスペイン代表戦、2025年10月のブラジル代表戦でも後半から一気呵成にゴールを重ね、勝ち切った実績もあり、日本としては自信を持って後半に入ったはずだ。
ところが、開始早々の50分。コーナーキック(CK)の流れから日本にとって最も警戒すべき存在であるフィルジル・ファン・ダイク)に頭で合わせられ、痛恨の失点。日本は劣勢に立たされた。
このままいくと厳しい状況も予想されたが、中村らは決して怯むことはなかった。そこから攻撃のギアを上げ、迎えた57分。ついに歓喜の時が訪れたのだ。
日本の二次攻撃から、中村は左ポケットを取った久保建英に絶妙な縦パスを差し込む。
久保が仕掛けている間に、自らはペナルティエリア角のいわゆる『敬斗ゾーン』に侵入。マイナスの折り返しを受けると、右へ持ち出してから右足を一閃。ゴール左隅に豪快な同点弾を決め切ったのである。