
サッカー日本代表の中村敬斗【写真:田中伸弥】
FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)初戦で強豪オランダ代表と2-2で引き分け、貴重な勝ち点1を獲得した。その立役者の一人となったのが中村敬斗だ。守備で体を張りながら、劣勢の展開で貴重な同点ゴールを奪取。紆余曲折を経てたどり着いた世界最高峰の舞台で、背番号「13」は確かな存在感を示した。(取材・文:元川悦子)[2/2ページ]
「もらう前から…」

貴重な同点ゴールを奪ったサッカー日本代表の中村敬斗【写真:Getty Images】
「パスが来る前から『久保選手からは来るだろう』というのは分かっていて、もらう前からどういう形でシュートを打つかはイメージできていました。
その中でわざとちょっとマイナスに置いて、(ダンフリースの)股を開かせるようにして、ファーに打つふりをしてニアという感じで、狙い通りのゴールでした」と本人もしてやったりの表情を浮かべた。
久保との阿吽の呼吸はU-15日本代表時代から10年がかりで積み上げてきたものだ。彼らは森山佳郎監督がチームの強化を始めた2015年から共闘。2017年U-17W杯(インド)に参戦し、U-20代表の活動でも長くコンビを組んできた。
「菅原(由勢)選手、瀬古(歩夢)選手、佐野海舟選手と2000年代の選手がこのW杯でどんどん突きあげていくのが大事」と中村は強調したが、「自分たちの世代が新たな歴史を作るんだ」という思いが非常に強いのだろう。
それができるだけのタフなキャリアを彼は歩んできた。2019年U-20W杯(ポーランド)の後、オランダ1部・トゥウェンテに赴き、一時はオーストリア2部でプレー。欧州5大リーグに参戦するまでに4年もの月日を擁した。
スタッド・ランスでも2シーズン目の24/25シーズンに11得点を叩き出しながら、クラブはリーグ・ドゥ(フランス2部)に降格。彼自身も移籍が叶わず、まさかの2部リーグでの戦いを強いられたのだ。
「力の差があるように見えますけど…」

サッカー日本代表の中村敬斗【写真:田中伸弥】
「マッチアップしたダンフリース選手もレアル・マドリードが決まっているような選手で、かたや僕はリーグ・ドゥ。一見、力の差があるように見えますけど、ゴールを取れて本当によかったです。
僕個人のキャリアはなかなか苦しい道のりだったので、いろんな意味で精神的にも肉体的にも強くなれた。自分を見失わず、自分を信じてやり続けて、今日、こういう舞台で先発で使ってくれた森保監督に感謝したいですね。
それに僕がこうやってW杯でスタメンで出れるのも、ケガで離脱した三笘(薫)選手、南野(拓実)選手が左サイドで貢献してきたから。彼らのおかげだと思います」と紆余曲折のキャリアをゴールという形で結実させた男は、改めて自身を支えてくれた人々に心から感謝した。
彼が示した献身性をチーム全員が忘れず、最後まで貫いたからこそ、日本はその後、サマーフィルに勝ち越しゴールを許しながらも、CKから鎌田大地が同点弾を奪取。2−2のドローに持ち込み、最難関の初戦で勝ち点1を手にした。
ミラクル同点劇の口火を切った中村は、まさにMVP級の働きを見せたと言っても過言ではない。
「やっぱり先制点を…」

サッカー日本代表の中村敬斗【写真:田中伸弥】
「敬斗は得点を取る能力が一番のストロングポイント。運動量があって、最後ゴールに顔を出せる。それにシュートがうまいんで、その場面をもっと多く作れればいいと思います」とかつてスタッド・ランスでコンビを組んだ伊東純也も太鼓判を押していた。
中村の決定力が今後の日本の成否を大きく左右するのは間違いないだろう。
「少ないチャンスを決められる、失点しても追いつけるのが自分たちの強みですけど、やっぱり先制点を取るに越したことはない。先制点を取ればまた別の違ったゲーム展開になると思う」とも中村は語ったが、チュニジア代表戦とスウェーデン代表戦はその大仕事を果たしてほしい。
彼の本領発揮はここからが本番だ。
(取材・文:元川悦子)
【著者プロフィール:元川悦子】
1967年、長野県生まれ。94年からサッカー取材に携わり、ワールドカップは94年アメリカ大会から2022年カタール大会まで8回連続で現地に赴いた。「足で稼ぐ取材」がモットーで、日本代表は練習からコンスタントに追っている。著書に『U-22』(小学館)、『黄金世代』(スキージャーナル)、「いじらない育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(NHK出版)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)などがある。
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