試合後、4-0での勝利を受けて、選手たちを円陣で鼓舞する日本代表の森保一監督【写真:Getty Images】
サッカー日本代表は日本時間6月21日、FIFAワールドカップ2026(北中米W杯)グループステージF組第2節でチュニジア代表と対戦し、4-0で勝利し、決勝トーナメント進出に前進した。この一戦について、元日本代表DFで2010年南アフリカW杯メンバーの岩政大樹氏は、日本代表の強さの背景にある“構造的変化”について語った。(取材・文:竹中愛美)[1/2ページ]
【単独インタビュー/取材日:6月21日】
「そういうメッセージを出し続けたのが森保監督の…」

サッカー日本代表の森保一監督【写真:田中伸弥】
ーー森保監督が8年間という年月で積み上げてきたものが今の日本代表の強さかと思いますが、岩政さんから見て、改めてどういったところが具体的に成長した部分だと思いますか?
「1人1人の選手がヨーロッパに渡って、それぞれが自分の足でヨーロッパに自分の存在を知らしめて、歩いてきている選手たちだなということですね。ヨーロッパで独り立ちするということの中には、いろんな日常の紆余曲折があって、それは監督の戦術を理解するということもそうですし、世界中から集まっているチームメイトの中でいろんな選手たちと競争して、そこで自分の特徴をプラスアルファで示すということもそうです。
もしくはその国のフットボールの文化に合わせながら自分が適応していくこともそうですし、生活に適応することもそうですけど、いろんなことを乗り越えながら、日常を乗り越えながら、進んできているので、試合の中で起こりうるいろんな状況をすでに乗り越えている選手たちだなということです。
ーーなるほど、日本はそういう選手たちが多いということですね。
「だからこそ、森保監督がヨーロッパに渡った選手たち、そこで活躍した選手たちを日本代表に呼び続けたんだと思います。そういう選手たちがいることもそうですけど、『そういう選手にならないと残らないよ』というメッセージを出し続けたのが森保監督のマネジメントだと思います。
ああやって開始早々にビルドアップからそれぞれの絵がつながって、一連でゴール前まで行くような攻撃ができたり。相手が出てくるのであれば、長いボールを使って、背後を使ったり。いろんな使い分けみたいなものって、1人1人が理解していないとできないことなので。それができない選手たちだと、もっとサッカーはどれかに特化する形になるんですよ」
「今の日本は全くそんなことないですよね」

W杯初ゴールを決めたサッカー日本代表の伊東純也【写真:田中伸弥】
ーー非常に興味深いお話ですね。
「例えばショートパスをつなぎますとか、一時期の日本がそうでしたよね。ロングボールならロングボールを使いますとか、カウンターならカウンターですとか、ハイプレスならハイプレスです。ブロックならブロック守備です。今の日本は使い分けていますよね、試合の中で。
それはベンチが伝えているというよりも、1人1人の選手がそれを理解してできるし、理解したものを周りと合わせられる。それができる選手が揃っていないと、使い分けにならないんですけど。結局使い分けにならないと、強いチームにはならないので」
ーー確かにそうですね。
「日本って、Jリーグとか、どうしてもまだその領域というか、何かに特化したフットボールを賞賛している人たちが多いですけど。今の日本は全くそんなことないですよね」
ーー特に、田中選手の縦パスに上田綺世選手がフリックして、伊東選手が抜け出した3点目はそうだったのかなと感じます。後半少し停滞感があった中、ピッチ内で選手たちが考えて、柔軟に対応したようにも見受けられました。そうしたところも成長のひとつということでしょうか?
「そう。今大会全体通して、たぶん傾向だと思うんですけど、戦術的なものの特許みたいなのはもう存在しなくて。みんな、もういろんなものが民主化されていますよね。大体やることって、どの国も、アフリカの国もアジアも、日本もそうですけど、ヨーロッパでプレーしていて、そういう選手たちが日常の中でいろんな戦術を経験していて、それをみんな知っている状況なので。
そこの何かに特化したやり方が特徴になることはもうないですね。どこもある意味、均質化している。そうなると、1人1人の戦術理解とか、状況判断とか、あとは展開に適応してプレーするとか、そういうところの差になっていく感じにもなってきている。
日本は、そういうトップレベルの選手が集まってやっている。そういう顔ぶればっかりですね。鎌田選手も田中碧もそう。(佐野)海舟もだいぶそうなってきましたし、綺世も伊東純也も堂安(律)も中村(敬斗)も。みんなそうですよね」
「日本はやっぱり1歩先に行っている」

チュニジア代表に4-0で快勝したサッカー日本代表【写真:田中伸弥】
ーー確かにそうですね。やはりひとつに特化しているだけでは、勝ち抜けないということですね。
「ヨーロッパのリーグのサッカーって約10年前ぐらい、もっと前ぐらいから、ペップ・グアルディオラのポゼッションが流行っていて、そこからストーミングみたいなスタイルの時代があった。ストーミング対ポゼッションみたいな、対立ってあったと思うんです。例えば、それの代表はリヴァプールとマンチェスター・シティだとして、マンチェスター・シティが徐々にハーランドとかとりながら、ちょっとストーミング要素を入れ始めて。
リヴァプールは逆に少しボールを動かすような要素を入れ始めて、全部ハイブリッドになっていった、みたいなのがこの7、8年前ぐらいかな。その状況だと思うんですけど、それが、どんどんヨーロッパのリーグで起こったことが代表チームに波及されて、今のW杯かなという感じですよね。
すると、全部がもうハイブリッドで、全部入りじゃなきゃもう勝てない時代で、みんなそれを経験している人たちが代表レベルになっている、10年前とかは、いろんな監督さんのいろんな戦術が、督促を持って伝えられていた気がするんですけど、今はもうそんなことないですよ。みんな、ある程度のものを同じように表現している感じがする。だから、そういう面では、ある意味、監督としてはちょっとつまらないんですよ」
ーーそうなんですね。
「どちらかというと、それの使い方とか、メンバーの起用の仕方とか、マネジメントとか、そういう領域に入ってきましたよね。監督の仕事って」
ーーなるほど。もうだいぶ細分化というか、本当に役割がはっきりされているというか、そういうレベルになってきているんですね。
「そうですね。だからどこもある程度の戦いをする。10年前だったら、例えば、アフリカのチームは全然戦術的にプレーしなくて、間延びしているとか、アジアもそうだったんですけど、そんなこともうないじゃないですか。
世界中のどの国もそれをやり始めて、そこでは差がないから、結構苦しい試合になるんだけど。結局、それを分けるのは選手の質だったり、経験値だったりするので。日本はやっぱり1歩先に行っている、チュニジアとは全然差があるというだけですよね」