フットボールチャンネル

J1 3時間前

「どうゆっくりボールを握るか」長沼洋一が示した浦和レッズの“縦へ”の先。初勝利で見えた新たな選択肢【コラム】

シリーズ:コラム text by 河治良幸 フリーライター photo by Getty Images
浦和レッズ 長沼洋一
浦和レッズ 長沼洋一【写真:Getty Images】



 浦和レッズが開幕3連敗の苦境を抜け出した。横浜F・マリノスとの打ち合いを制し、4試合目で手にした今季初勝利。結果だけを見れば待望の1勝だが、ピッチ上にはここからの浦和を考えるうえで見逃せない変化もあった。その中で存在感を放ったのが長沼洋一だ。今季の浦和は、この1勝をどう次につなげていくのか。(取材・文:河治良幸)[2/2ページ]

長沼が考える「もう一つの選択肢」

浦和レッズ 長沼洋一
浦和レッズ 長沼洋一【写真:Getty Images】


 キャンプから「縦へ」という基準を強く植え付けられてきた浦和だが、長沼自身は常に前へ急ぐことが正解だとは考えていない。

「僕自身は、そこまで『縦へ、縦へ』という意識だけではありませんでした。もちろん縦への意識はありますけど、ボールも絶対に持てると思っていました」

 縦へ行けるなら行く。一方、自分にボールが入ったとき、必要なら少し時間を作る。

 そこで見えてくるのが、現在の浦和におけるポゼッションの位置づけだ。

 第一の選択は縦への攻撃。相手の陣形が整う前にゴールへ向かう。

 しかし、そこでフィニッシュまで完結できなければ、もう一度無理に縦へ急ぐ必要はない。

「それができなかったときに、どうゆっくりボールを握るか。その使い分けだと思います」

 長沼がイメージするのは、自陣のGKから時間をかけて組み立てることを第一にしたポゼッションではない。

 まず相手を後退させる。そこへ後方の選手も押し上げる。そして相手陣でボールを動かし、奪われても高い位置で回収できる状況を作る。

「相手陣に押し込み、ボールを奪われた後も奪い返しやすくなります。そこから二次攻撃、三次攻撃もできると思います。急いで相手陣へ行くことも必要ですけど、ゴールまで行けなかった、シュートやフィニッシュまで行けなかったのであれば、相手陣で押し込む形へ頭を切り替えることが大事だと思います」

「縦へのサッカー」と「ポゼッション」は対立するものではない。

 まず縦への攻撃で相手を押し込む。それが完結しなければ、高い位置でポゼッションへ切り替える。

 その順番が重要なのだろう。

監督が残している選手の判断

浦和レッズの曺貴裁
リーグ戦初勝利を挙げた浦和レッズの曺貴裁監督【写真:Getty Images】


 興味深いのは、その使い分けを曺監督がすべて細かく規定しているわけではないことだ。

「縦への意識は、キャンプからかなり植え付けられてきました。あとは、それがあったうえで、縦へ行けなかったときに、先ほど話したように相手を押し込むことについては、たぶん選手に任せてくれている部分だと思います」

 だからこそ、ピッチ上の判断が重要になる。

 行けるなら行く。難しければ一度広げる。相手を押し込めたなら、後方も押し上げてボールを動かす。

 長沼のように前へ出るだけでなく、必要に応じてテンポを変えられる選手は、その判断をつなぐ役割を担える。

 もちろん、3-2で勝ったことで課題が解消されたわけではない。

 前半はマリノスのサイドチェンジに後手を踏む場面があった。

 長沼も「もっと良い読みで、前半からその選手に渡させないようなポジションを取れれば良かった」と振り返る。

 後半は「プレスで誰がどこへ行くのかという指示が明確に出された」ことで対応を改善した。その流れの中で、長沼が諏訪間のサイドチェンジを前でカットしたプレーから決勝点が生まれたことにも意味がある。

初勝利でも残った守備の課題

横浜F・マリノス 谷村海那
浦和レッズとの一戦で2ゴールを記録した横浜F・マリノスの谷村海那【写真:Getty Images】


 一方、57分には井上太聖のクロスから谷村海那にヘディングで勝ち越されている。

 長沼が問題視したのもクロス対応だった。

「人はいるのにやられてしまうという状況が、ずっと続いています。改善しなければいけないところだと思います」

 浦和は開幕4試合で13失点。今季初勝利を挙げても、守備の改善が必要なことに変わりはない。

 それでも3連敗の中で掲げてきた基準を捨てず、その延長線上で3-2という結果をつかんだ。

 長沼が諏訪間のサイドチェンジを読み、前へ出て奪った。サヴィオへつなぎ、浦和はすぐに縦へ向かった。そして南野の決勝点が生まれた。

 良い守備から高い位置で奪い、相手が整う前にゴールへ向かう。一方、それができなければ無理に急がず、相手陣でボールを握って二次攻撃、三次攻撃につなげる。

 浦和に必要なポゼッションは、「縦へ」をやめるためのものではない。

 キャンプから磨いてきた「縦へ」という原則を生かすための、もう一つの選択肢である。

 その使い分けをチームとして身につけられるか。

 攻守両面で前へ出るタイミングを判断し、必要ならボールを落ち着かせることもできる長沼洋一は、その次の段階へ進もうとする浦和において、一つの鍵を握る存在になりそうだ。

(取材・文:河治良幸)

【著者プロフィール:河治良幸 フリーライター】
東京都出身。サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で日本代表を担当し、プレー分析を軸にグローバルな視点でサッカーの潮流を見続ける。セガ『WCFF』の選手プロフィールを担当。著書に『勝負のスイッチ』『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』『サッカー番狂わせ完全読本ジャイアントキリングはキセキじゃない』がある。TwitterIDは@y_kawaji

【関連記事】
曺貴裁監督「理論だけでも情熱だけでもないチームに」。浦和レッズ、連敗を3で止め今季初白星
「スタメンで使ってくれ」浦和レッズ、肥田野蓮治がぶつけた思い。譲れないポジション争いへ「熱い思いを持った選手がピッチに立つべき」【コラム】
浦和レッズ開幕2連敗、8失点に金子拓郎が危機感「そんな甘いこと言ってる場合じゃない」

『フットボールチャンネル』でサッカー最新情報を見よう!
いち早くチェックしたい方は下記リンクから↓↓


【了】

1 2

KANZENからのお知らせ

scroll top