横浜F・マリノスの知念慶が、持ち前の得点力でチームを救った。14日に行われたYBCルヴァンカップの清水エスパルス戦。1-1で迎えた後半、右CKから鮮やかなヘディングシュートを決め、2-1の逆転勝利に導いた。かつてFWとして活躍し、鹿島アントラーズではボランチへの転向を経てJ1制覇も経験した31歳。しかし、今夏に加入した横浜FMでもポジション争いは激しく、直近のリーグ戦では先発を外れていた。「苦手なところで勝負するんじゃなくて…」。新天地で改めて自らの強みと向き合う知念は、名門復活の原動力となれるのか。(取材・文:元川悦子)[1/2ページ]
【2026/27 YBCルヴァンカップ 1stラウンド3回戦】
2026年10月14日 横浜F・マリノス 2-1 清水エスパルス
(日産スタジアム)
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中盤をコントロールした知念慶
2025年のJ1は15位、J1百年構想リーグも13位と、近年は苦境続きだった名門・横浜F・マリノス。だが、スティーブ・コリカ監督体制に移行した今季は、悪くない戦いを見せている。
J1は9節終了時点で白星先行の7位。上位グループともそこまで差はない。天皇杯、YBCルヴァンカップを含めて公式戦7戦無敗というポジティブな状況で、10月14日のルヴァン杯1stラウンド3回戦・清水エスパルス戦を迎えることになった。
この日のマリノスはジェイソン・キニョーネスや井上太聖ら、リーグ戦の先発メンバーと喜田拓也、二田理央、オナイウ情滋らサブ組がミックスした陣容に。2種登録の18歳・藤井翔大もスタメンに名を連ねた。
こうした中、喜田とともに中盤をコントロールしたのが、31歳の知念慶だ。
ご存じの通り、彼は川崎フロンターレ、鹿島アントラーズでプロキャリアを重ね、鹿島時代の2024年にFWからボランチへ転向した。それが大成功し、同年にはJリーグベストイレブンにも名を連ねるほどの活躍を見せた。
川崎時代の恩師・鬼木達監督が鹿島の指揮官に就任した2025年も要所要所で使われてはいたが、パス出しや組み立ての課題も指摘され、前年より出番が減少していた。常勝軍団の9年ぶりのJ1制覇の原動力にはなったものの、本人としてはどこか不完全燃焼感が拭えなかったのかもしれない。
そこで今夏、「これから成長するクラブで新たな挑戦をしたい」とマリノスへの移籍に踏み切ったのだ。
ここ一番で伝家の宝刀
コリカ監督からは最初から信頼され、開幕から9月の代表ウィーク前まではほぼコンスタントにボランチで先発していたが、リーグ再開初戦だった10月10日のセレッソ大阪戦はベンチ。先発したのは山根陸と松村晃助のフレッシュなコンビで、それだけチーム内競争が激化したということだろう。
知念自身も「この状況はチームとしてすごくいいこと」と前向きに発言している。今回のルヴァン杯・清水戦で再び自身の存在感を色濃く示そうと意欲を強めていたに違いない。
前半のマリノスはボール支配率では相手を上回ったものの、シュート数はわずかに「1」。清水も1本で、両者ともに固い45分間だった。
コリカ監督は変化をつけるべく、後半頭から谷村海那と諏訪間幸成を投入する。攻撃のギアを上げていったが、一瞬のスキを突かれて清水の藤井智也に先制点を許す形になった。
それでも、キャプテン・喜田が「パギ(朴一圭)君だったり後ろの選手と共有していたのは、失点する可能性はあると。一番大事なのはそこで崩れないこと。そう声をかけ合いました」と強調した通り、彼らはすぐさまチームの気を引き締める。知念も喜田と修正を図り、流れを引き寄せようと試みた。
それが奏功し、72分にエース谷村が同点弾をゲット。さらに宮市亮やテヴィスら持ち駒を投入して迎えた81分、知念が伝家の宝刀を抜く。
ジョルディ・クルークスの右CKにニアサイドで鋭く反応。打点の高いピンポイントヘッドでゴールに流し込み、値千金の決勝弾を叩き出したのだ。
「今日に関しては、ジョルディのボールが全てだと思いますけど、練習からかなりいいボールが入っていたので、自分もいいイメージを持って入れたのはよかったと思います」と背番号14をつける男は嬉しそうにコメントした。
もともと点取り屋の知念はヘディングシュートのうまさに定評があるが、ここ一番で点を取れる勝負強さも大きなストロングだ。
「苦手なところで勝負するんじゃなくて…」
「試合終盤のゴールというのは、最後は気持ちだと思っています」と知念も神妙な面持ちで語ったが、内に秘めた闘争心を得点という形で表現できるのが彼の凄さである。
コリカ監督はボール奪取力やデュエルの強さという部分を高く評価して、今季頭から彼を起用し続けていたのだろうが、そこにゴールが加われば、さらに心強い存在になれる。
チームを2-1で勝たせ、ルヴァン杯4回戦進出へと導いた知念はここから再び序列を上げていきそうだ。
「監督も『6番経由(の攻撃)』というのは口を酸っぱくして言ってますけど、そこにトライしつつ、自分の強みは消さないようにしていきたい。(パス出しや組み立てといった)苦手なところで勝負するんじゃなくて、強みを出すことがチームへの貢献につながると思うので。
今日のゴールもそうですけど、自分の持ち味を失わずにやっていきたいと思っています」
知念は自分の進むべき方向性をより明確にできた様子だ。
実際、マリノスのボランチ陣はそれぞれ個性が異なるキャラクターの集団だ。



