
柏レイソル 小泉佳穂【写真:Getty Images】
歯車が噛み合わなかった。柏レイソルは17日、明治安田J1リーグ第10節で名古屋グランパスに1-3で敗れ、首位から陥落した。小泉佳穂への徹底マーク、攻撃時のポジショニング、そしてボールを失った瞬間の守備。名古屋の積極的なプレッシングによって浮き彫りになったのは、柏が武器としてきた流動性の裏側に潜む課題だった。優勝を目指すチームにとって、この敗戦をさらなる進化に向けた「レッスン」とすることができるだろうか。(取材・文:高橋大地)[3/3ページ]
「決して悪い試合ではなかった」。それでも勝敗を分けた攻守の精度

柏レイソルのリカルド・ロドリゲス監督【写真:編集部】
だが、柏は同点に追いついた後、再び名古屋に勝ち越しを許した。
36分の2失点目も、小泉と高嶺の攻防が発端だった。
自陣の低い位置でボールを拾った小泉は、前線へボールをつなごうとした。しかし、蹴り出したボールが寄せてきた高嶺に当たり、その跳ね返りを名古屋に拾われる。永井謙佑からのパスを受けた木村勇大が見事なシュートを決め、勝ち越しゴールが生まれた。
1失点目とは形が異なるものの、いずれも小泉へのプレッシャーが失点につながった。木村のシュートも素晴らしかったが、攻撃の中心選手に自由を与えないという名古屋の狙いが、結果に表れた場面でもあった。
それでもリカルド監督は試合後、こう振り返っている。
「我々が悪い試合をしたかというと、決してそうではなかったと思います」
名古屋の特徴的な守備に90分間苦しみ続けたわけではなく、狙い通りに守備を剥がせた場面も多かったという。
問題は、その先にあった。
小西も、相手の守備を攻略しかけた場面でのミスを悔やんだ。
「ちょっと僕も含めてですけど、剥がれそうなところでミスパスが出たりとか、ちょっともったいないシーンが多かった」
相手の守備を剥がした後も、名古屋の選手は想定以上に前へ出てきた。その背後へパスを通せていれば、相手を後退させることができたかもしれない。相手の狙いを理解し、スペースを見つけていても、最後のプレーの精度を欠けばチャンスにはつながらない。
また、リカルド監督は前半の落ち着きのなさも課題に挙げた。
「前半、確かに慌ててプレーする場面っていうのが多かったと、いつも以上に多かったと思いました」
ハーフタイムには、もっと落ち着いて攻撃するよう指示したという。
後半開始から瀬川祐輔と原田亘を投入した柏は、ボールを保持してチャンスを作る時間を増やした。しかし、同点に追いつけないまま、79分に山岸祐也に3点目を奪われた。
この場面で問題だったのは、甲田英將がボールを受けた瞬間の守備の対応だ。
ひとつ前のプレーでは、原輝綺に中川敦瑛がついていった。そして、原からパスを受けた甲田に最も近い位置にいたのは、その中川だった。しかし、中川は原への対応を続けており、甲田へのアプローチにすぐには移れなかった。
一方、原川力は別の選手も警戒しながら、すでにスピードに乗っていた甲田への対応を迫られた。難しい状況での守備となり、甲田の前進を止められず、最終的に山岸へのラストパスを許してしまった。
原川が突破を許したことだけを問題にするべきではない。原から甲田にボールが渡った瞬間、誰がボールホルダーにチャレンジし、誰が周囲をカバーするのか。その判断と連動が十分ではなかった。
リカルド監督は、この3失点目について「十分防げた失点だと思う」と振り返っている。
攻撃では最後の精度を欠き、守備では防げたはずの失点を喫した。1失点目ではセンターバックが前進した背後のスペースを使われ、3失点目では相手の動きに応じた守備の対応が噛み合わなかった。いずれも、選手の動きによって生じるスペースや役割の変化に、チームとしてどう対応するかという課題を示していた。
自分たちの強みを発揮できた時間があったからこそ、こうした細部のズレが重くのしかかる敗戦となった。
優勝へのレッスン。次は5連勝のFC東京との対決
柏は直前のリーグ戦でFC町田ゼルビア、ヴィッセル神戸を連破していた。
神戸戦後、小西は「勝負強さがないと優勝できない」と語っていた。
では、その勝負強さとは何か。
自分たちの得意な形で相手を圧倒する力だけではないはずだ。相手に研究され、中心選手を封じられても、その狙いを逆手に取り、試合の中で解決策を見つけられるか。
小泉への徹底マークは、柏にとって攻略の糸口にもなり得た。
名古屋戦では、高嶺が小泉を追いかけることで生まれたスペースを十分に利用できなかった。藤尾という新たな武器を生かすためにも、流動的に動くこと自体を目的とせず、誰が相手を引きつけ、誰がスペースを使うのかを整理する必要がある。
同時に、攻撃時のポジショニングは守備と切り離せない。誰かが前へ出れば、その背後を誰が埋めるのか。相手の動きに対応する際にも、誰がボールへ向かい、誰がカバーするのか。その判断をチーム全体で共有することが求められる。
名古屋戦の敗戦は、柏が積み重ねてきたサッカーを否定するものではない。むしろ、その強みをさらに磨き、優勝を勝ち取るために何が必要なのかを突きつける一戦だった。
次に待ち受けるのは、21日水曜日のFC東京戦だ。目下、破竹の5連勝を飾る好調なチームである。
名古屋戦で得た課題の解決を考えるうえでは、申し分のない相手との一戦となる。
(取材・文:高橋大地)
【著者プロフィール:高橋大地】
1988年7月生まれ、東京都出身。株式会社カンゼンWEB局編集局長、2026年8月よりフットボールチャンネル編集長も兼任。WEBサイトおよび書籍の編集者として活動し、『ジュニアサッカーを応援しよう!WEB』編集長、『競馬チャンネル』初代編集長、『ベースボールチャンネル』編集長などを歴任。サッカーをはじめとするスポーツ分野を中心に、編集・取材・執筆を行う。週末は少年サッカーの現場でボランティアコーチとして活動。育成年代のスポーツ環境づくりや地域スポーツの普及・発信にも取り組んでいる。
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