
柏レイソル 山内日向汰【写真:Getty Images】
3日前は前半のみでピッチを退いた。しかし、次に迎えた鹿島アントラーズとの上位対決では、2度ネットを揺らして勝利の立役者となった。10月24日、柏レイソルは鹿島に3-2で逆転勝利し、敵地で約6年ぶりの白星を挙げた。前節で得た気づきをプレーに生かし、限られた出場時間で結果を残した山内日向汰。激しいポジション争いの中で示した覚悟とは対照的に、試合後の囲み取材では、サポーターに向けた愛嬌たっぷりの「お願い」が飛び出した。(取材・文:高橋大地)[2/2ページ]
「出ている意味を証明し続ける」。プロ初の1試合2得点

柏レイソル ゴールを決めた山内日向汰と遠藤渓太【写真:Getty Images】
2点目を決めたのは、交代カードが切られる直前だった。
ピッチの外で瀬川祐輔が準備している姿を見て、山内は「俺かな」と思ったという。ただ、プレー中は「そこまで考えることはしてませんでした」と振り返っている。
結果的に、そのわずかな時間でチームの勝利を大きく引き寄せるゴールを奪った。プロキャリアで初めてとなる1試合2得点だった。
山内は2026年1月、川崎フロンターレから柏へ完全移籍した。
加入時には「自分の持っているすべてをこのチームに捧げて闘います。自分自身にベクトルを向けて、全身全霊でレイソルのために走り続けます」と誓っていた。
鹿島戦で見せた献身的な守備と2得点は、その言葉とも重なる。
一方で、90分間を通して高い強度を維持するための力の配分は、今も本人が「実験しているところ」だという。
長くプレーする自信はある。それでも、まず求められるのは、与えられた出場時間の中で結果を残すことだ。
リカルド監督から毎試合「数字を残せ」と要求されることも、山内は前向きに受け止めている。
「シャドーは人数がいるので、自分が出ている意味というのを証明し続けるためには必要なものだと思う」
柏のシャドーには実力者がそろう。その中でピッチに立ち続けるためには、プレーの内容だけでなく、得点という目に見える結果も欠かせない。鹿島戦の2ゴールは、自身の存在価値を示す大きな結果となった。
試合終盤には鹿島に1点を返されたものの、柏は3-2で逃げ切った。
山内も勝利の意味を強調している。
「この試合で勝ち点3を取れたというのは、今年のレイソルの強さを表していると思う。シーズンが終わった時に大きな一戦だったねと言えるようにしたい」
過密日程の中で昨季王者を破った柏。その勝利を引き寄せた山内には、厳しいポジション争いを勝ち抜くための手応えも残ったはずだ。
「僕も一生懸命戦っているので(笑)」。ヒーローの切なるお願い

柏レイソル・山内日向汰【写真:Getty Images】
2点目のシュートについて、山内は自ら「コースは甘かった」と認めている。
それでもゴールになった理由を、試合直後のDAZNのインタビューでは「日頃の行い」が良かったからだと、冗談めかしていた。
その後の囲み取材で、普段から何か良いことをしているのかと尋ねられると、山内は笑いながら答えた。
「毎日『今日はいい日になる』と言い聞かせて生きているんで(笑)」
大卒3年目、まだどこかあどけなさが残る山内らしい返答だった。
文字通り、重要な一戦でヒーローとなった山内。だが、意外にも、個人チャント(応援歌)はまだ作られていない。
そして実はこの日、試合前に遠藤渓太のチャントがお披露目されていたのだ。
遠藤の柏への加入が発表されたのは6月30日。一方、山内は1月に加入し、百年構想リーグから黄色いユニフォームをまとっている。
山内の方が先に柏の一員となっていたが、先にチャントができたのは遠藤だった。
山内もそろそろ自分のチャントが欲しいのではないか。そう尋ねると、思わず本音がこぼれた。
「いやぁ、本当そうですよ。寂しいです。僕も一生懸命戦っているので(笑)」
先を越されたことを責めるでもなく、少し冗談めかして「寂しい」とこぼす。そして、自分だって一生懸命やっているのだと、何とも愛嬌たっぷりにアピールする。昨季王者を相手に2得点を決めたばかりのヒーローが、今度は自分の応援歌をサポーターにお願いしている。その気取らない姿が、山内の人柄をよく表していた。
黄色いゴール裏から、山内日向汰だけのチャントが響く日は、もう目前だろう。
最後に改めてサポーターへのメッセージを求めると、山内は笑いながら呼びかけた。
「かっこいいチャントをぜひお願いします(笑)」
(取材・文:高橋大地)
【著者プロフィール:高橋大地】
1988年7月生まれ、東京都出身。株式会社カンゼンWEB局編集局長、2026年8月よりフットボールチャンネル編集長も兼任。WEBサイトおよび書籍の編集者として活動し、『ジュニアサッカーを応援しよう!WEB』編集長、『競馬チャンネル』初代編集長、『ベースボールチャンネル』編集長などを歴任。サッカーをはじめとするスポーツ分野を中心に、編集・取材・執筆を行う。週末は少年サッカーの現場でボランティアコーチとして活動。育成年代のスポーツ環境づくりや地域スポーツの普及・発信にも取り組んでいる。
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