
サンフレッチェ広島の鈴木章斗【写真:Getty Images】
サンフレッチェ広島の「10番」が、驚異的なペースでゴールを量産している。水戸ホーリーホック戦ではアクロバティックな一撃を叩き込み、今季13試合目で早くも2桁得点に到達した鈴木章斗。かつては遠い憧れだった日本代表も、いまは一歩ずつ近づいている。湘南ベルマーレ時代の盟友や同世代の活躍に刺激を受けながら、23歳のストライカーは初招集を見据える。(取材・文:藤江直人)[1/2ページ]
【2026/27明治安田J1リーグ第13節】
2026年10月31日 水戸ホーリーホック 0-3 サンフレッチェ広島
(水戸信用金庫スタジアム)
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「本当にすごい選手」チームメイトも驚く鈴木章斗の決定力

華麗なジャンピングボレーでチームに先制点をもたらした鈴木章斗【写真:Getty Images】
日本代表デビューを果たしたばかりの中野就斗が、チームメイトの豪快な一撃に思わず舌を巻いた。
「あそこにクロスをあげるだけで、ああやって決められる。本当にすごい選手だな、と」
ゴールハンターぶりを初めて目の当たりにしたのだろう。サンフレッチェ広島の出身で、今夏に期限付き移籍から完全移籍へ移行した水戸ホーリーホックでゲームキャプテンを務めた仙波大志も目を丸くした。
「すごいですよね。ちょっと(レベルが)違います。早く海外に行ってほしいですよ」
中野が称賛し、仙波が驚いたのは広島の「10番」を背負う鈴木章斗。水戸のホーム、水戸信用金庫スタジアムに乗り込んだ10月31日のJ1リーグ第13節。両チームともに無得点で迎えた30分だった。
退場者を出し、10人での戦いを余儀なくされていた水戸が自陣にブロックを敷いて必死に耐える。その外側でボールを回し、揺さぶっていた広島のパスが、右タッチライン際の中野へわたった直後だった。
ワンタッチでボールを落ち着かせた中野が、間髪入れずに鋭いクロスを水戸ゴール前へ送る。
「相手が一人少なくなって、ブロックの外側でのボール回しが多くなるなかで、クロスは必ず来ると思っていたので意識して相手選手の間へ入っていきました。本当に当てるだけだ、と思っていたので」
このように振り返った鈴木だが、その後は「あまり覚えていないんです」と苦笑する。
クロスはジャンプしてクリアしようとしたDF家泉怜依の頭上を越えて、右ウイングバック谷口海斗の眼前に急降下してくる。次の瞬間、家泉と谷口の間に生じていたスペースに鈴木が割って入ってきた。
しかも宙を舞い、体を傾かせながら高い打点で利き足の右足をヒットさせる。アクロバティックなジャンピングボレー。しかもゴール右を狙った一撃に、守護神ヤクブ・スウォビィクは一歩も動けなかった。
「あまり数字は気にしていない」淡々と積み重ねるゴールと結果

13節を終えて早くも2桁得点をマークした鈴木章斗【写真:Getty Images】
広島を3-0の快勝に導く序曲となった10ゴール目。湘南ベルマーレ時代の2024シーズン以来、2度目の年間2桁ゴールだが、このときは最終節のひとつ前、鈴木個人としては出場33試合目の到達だった。
対照的に今シーズンは出場わずか13試合目での大台到達。広島の歴史を振り返っても、2012シーズンの佐藤寿人氏に並ぶ最速記録を、鈴木は「思っていた以上に早いペースで取れている」と淡々と振り返った。
「あまり数字は気にしていないし、自分自身もそれほど大きくは変わっていないと思いますけど、本当にチャンスがたくさんあるので。そこでゴールの枠にしっかりと飛ばしてきた結果だと思っています」
昨シーズンのオフに、大阪・阪南大学高校から2022シーズン加入して4年間プレーした湘南から完全移籍で広島に加入した。新天地で背負う「10番」は、覚悟と決意とを込めて自ら選んだものだった。
湘南でも昨シーズンは「10番」を背負い、シーズン中に22歳になる若さでキャプテンも拝命した。しかし個人的には9ゴールで2年連続の2桁ゴールを逃し、湘南も19位に終わってJ2降格を喫した。
募らせ続けた忸怩たる思いが、マルコス・ジュニオールの退団で空き番になっていた「10」を鈴木に背負わせた。昨シーズンの自分へのリベンジであり、自分に重圧をかけて逃げ道も封じるための手段でもあった。
「広島の『10番』に求められているのは…」

広島加入直後から背番号「10」を背負う【写真:Getty Images】
「責任と覚悟をしっかりと持って、この背番号を選ばせてもらいました。もっと、もっとチームに貢献できたと思っていますけど、この結果を見れば最低限(の仕事)はできているのかな、と思っています」
シーズン序盤での自己評価で及第点を与えた鈴木は、昨シーズンとの違いにこう言及している。
「湘南ではやるべき仕事がものすごく多かったけど、広島の『10番』に求められているのは数字なので。もしもボールを失っても、後ろの選手たちがしっかりと守ってくれるのも大きいですね」
13試合を終えた広島の総失点「10」はFC町田ゼルビアと並び、FC東京の「8」に次いでリーグで2番目に少ない。中野に荒木隼人と日本代表を擁する堅守が、ゴールに絡む仕事に専念できる好循環を生む。
その証がリーグ最多を誇る「32」の総得点となる。リーグ最少失点をマークしながら、決定力不足が響いて4位に終わった昨シーズンの総得点は「46」。リーグ8位タイに甘んじた数字に早くも迫りつつある。
得点力アップの理由は、約3分の1を叩き出している鈴木の加入を抜きには語れない。鈴木がゴールを決めた試合は、先制点を決めた3戦を含めてここまで8戦全勝。不敗神話にも鈴木は謙虚さを忘れない。
「(全勝は)特に意識していませんけど、チームとして先制点を取れればほとんど負けない感じもしていた。正直に言えば誰が取ってもいいんですけど、自分自身が取れればやはり一番いいかな、と」