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Jリーグ 6年前

名古屋のジョー獲得でブラジルに広がる波紋。自国のW杯戦士が流出、断れなかったオファー

新シーズンからJ1に復帰する名古屋グランパスは3日、ブラジルの名門コリンチャンスから元同国代表FWジョーの獲得を発表した。2014年のブラジルW杯に出場した経歴を誇り、昨季の国内リーグ得点王とMVPを獲得したほどの選手が日本への移籍を選んだことはどんな意味を持つのだろうか。そしてブラジル国内ではどのように受け止められているのだろうか。(取材・文:チアゴ・ボンテンポ【ブラジル】)

text by チアゴ・ボンテンポ photo by Getty Images

多額の負債抱えるコリンチャンス。地元出身でも売却はやむなし

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コリンチャンスから元ブラジル代表で2014年W杯にも出場したFWジョーが名古屋グランパスへ移籍【写真:Getty Images】

 日本のサポーターかブラジルのサポーターか、より驚いたのはどちらの方だっただろうか。

 コリンチャンスがブラジル全国選手権1部優勝を成し遂げた1ヶ月後、チームのベストプレーヤーを日本の名古屋グランパスへ売却することが合意に達したというニュースが報じられた。ジョアン・アウベス・デ・アシス・シウバ、通称“ジョー”はブラジルで輝かしいシーズンを過ごし、ブラジル全国選手権1部で34試合で18ゴールを記録。リーグ得点王を獲得するとともに年間MVPに選出された。その男がJリーグでプレーすることになる。

 ブラジルでこのニュースが伝えられると、コリンチャンスのサポーターの間には強い落胆と怒りが広がった。ジョーの姿勢を批判する者もいる。つい先日、彼は「コパ・リベルタドーレスに出場するため残留したい」と話し、関心を示しているという中国のクラブからのオファーに耳を貸すつもりはないと主張していた。

 新シーズンに向けて一気に悲観的になってしまった者もいる。「来年は何のタイトルも狙えない」「もうダメだ、2018年は終わった」といったような声が聞こえてくる。名古屋グランパスのSNSへ批判をぶつけ、ポルトガル語で侮辱的・差別的なメッセージを投稿する者までいた。

 コリンチャンスは経済的に厳しい状況にあり、多額の負債を抱えている。クラブ創設から100年間待ちわびた末に、2014年W杯のために建設されたアレーナ・コリンチャンスという自分たちのスタジアムを持つことができたが、その費用を完済するには長い年月を要する。フリーで加入した選手を売却することで1100万ユーロ(約15億円)を手に入れられるのなら、それがファンの感情をどれほど傷つけようとも、大きな取引であることは間違いない。クラブにとっても選手にとっても、名古屋からのオファーは「断りきれない」とみなされるものだった。

 コリンチャンスのサポーターがジョーを愛していたのは、彼が2017年のチームのエースだったからという理由だけではない。サンパウロで生まれ育った地元っ子であり、コリンチャンスの下部組織でキャリアをスタートさせた選手だ。2003年に16歳3ヶ月29日で初出場し、クラブの最年少プロデビュー記録も保持している。“(コリンチャンスの地元)イタケラの申し子”である。

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