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日本代表 10年前

今だから分かる、アジアカップ時の言葉に隠された本田圭佑の実現力

text by 元川悦子 photo by Kenzaburo Matsuoka

「(カタールは)もっと簡単に勝てた相手だったんじゃないかと思います」

 続く13日のシリア戦も川島永嗣が退場する大乱戦となったが、窮地に陥った日本を救ったのが本田のPK決勝弾だった。相手のゴールど真ん中に蹴りこんだその一撃に、彼の強気の姿勢が表れていた。

「GK見て蹴ろうと思ったけど、右に蹴ろうと思ったら動かなかったんで真ん中に蹴った。ただ、ちょっとキックが強すぎたんで、当たるかなと。危なかったけど、ラッキーゴールでした。よかったです」と本人も安堵する大会初得点で、日本に勢いが出てきた。

 続く17日のサウジアラビア戦は左足首ねんざで欠場し、迎えた21日の準々決勝・カタール戦。本田は勝負のカギをこう捉えていた。

「カタールはロングボールを多用する印象があるから難しいことも出てくる。僕らが個で打開するのが重要な要素。特に前の選手はそう。組織力は日本のよさだけど、勝負を決するのは個の力。紙一重のところで誰が打開できるかと思う」

 彼が指摘する通り、カタール戦は簡単な戦いにはならなかった。日本は2度のリードを許した挙句、吉田が退場。シリア戦に続いて10人での戦いを強いられる。そんな中、本田は香川の1点目をお膳立てする岡崎慎司への浮き球のパスを出し、香川の2点目も起点を作るなど、絶大な存在感を要所で示し、3-2の逆転勝利に貢献した。

「メンタル的にはこういった厳しい試合に勝てたことで一回り大きくなったんじゃないかと思います。10人になってもみんな最後まで諦めなかったっていうのは1つ勝因。だけど、課題は山積み。

 こういう相手にもチャンスを多く作って多くのゴールを取って、日本のペースで進めることができたんじゃないかと思ってます。ギリギリの展開は自分たちが招いたミス。もっと簡単に勝てた相手だったんじゃないかと思います」と高みを目指す男はあえて苦言を呈した。

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