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Jリーグ 10年前

J規約変更がもたらした浦和の無観客試合。期待したい差別への認知とサッカーを超えた日本社会全体への影響

text by 海老沢純一 photo by Asuka Kudo / Football Channel

昨季までであれば「けん責と制裁金」で済んでいた可能性も

昨シーズンまでの規約を見てみると、今季の[4]に追加された「無観客試合の開催」がない。つまり、昨シーズンまでは「制裁金」以上の罰則は「勝点減」ということになっていた。

この勝ち点をはく奪するという制裁は、有名なところで言えばセリエAの「カルチョーポリ」がある。組織的な審判買収によって試合結果を操作した大規模な八百長事件で、主犯格のルチアーノ・モッジがGMを務めていた名門ユベントスがセリエBに降格し、フィオレンティーナ、レッジーナ、ACミラン、ラツィオが勝ち点をはく奪された事件だ。

世界的に見れば、その他にもクラブの破産や選手の不正起用、逮捕者の続出した暴動による勝ち点はく奪の前例はあった。しかし、Jリーグで起こった事件に関しては、勝ち点はく奪というほどの決断は出来なかった(差別の度合いは数字では測れない難しさもある)。そのため、制裁金以上の処分はこれまでに無かったのだ。

しかし、Jリーグは今シーズンから人種差別などの問題に対して、より厳しい処分を下すために制裁の項目を増やしていたのだ。

昨シーズンまでであれば今回の事件も「けん責と制裁金」のみの処分となっていただろう。わずか開幕2節でこの規約変更が意味をなしてしまったことは残念極まりないことだが、今後のJリーグのためにも「無観客試合」の処分を下せるようになったことは大きな前進のように感じる。

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