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3位へ急上昇、マンUはなぜ復活したのか? 美意識求める指揮官が兼ね備えていた“現実感”

text by 山中忍 photo by Getty Images

「美学」に固執しない選手起用

 現実に即した采配の代表例はマルアン・フェライニのスタメン定着だ。高さと強いフィジカルが特長のフェライニが、高精度な足下の技術を前提とするファン・ハール好みの選手だとは思えない。足首を負傷していなければ、今夏の移籍市場で売却されていた可能性も高かった。

 だが、手元に残ったフェライニは、途中出場の8節ウェスト・ブロムウィッチ戦(2-2)でゴールを含むインパクトを残した。すると、試合後に「私は創造性のある選手に目がいくタイプだが、イングランドではフィジカルにも着目する必要があるようだ」と語った指揮官は、続くチェルシー戦(1-1)で巨漢のセンターハーフを今季初の先発起用。

 セスク・ファブレガスのマンマークとカウンター時の攻撃参加を命じられたフェライニは、セスクのパスを通常の半数にも満たない40本に抑えさえつつ、終了間際の同点ゴールにもヘディングで絡んだ。連勝の皮切りとなった11節クリスタル・パレス戦(1-0)でも、続く強豪対決で今季初となるアウェイでの白星を上げたアーセナル戦(2-1)でも、頻繁に攻め上がって相手ゴールを脅かしていた。

 敢えてポゼッションを譲ったアーセナル戦でのカウンター狙いもさることながら、クリスタル・パレス戦で見られたウェイン・ルーニーのMF起用も、「美学」だけに固執しないファン・ハールならではだ。

 自らが新キャプテンに指名したルーニーが、当人が好むストライカーとして活躍できれば最も美しい。だが、現実直視の指揮官は「ストライカーとしてはファルカオが格上だ」と公言して、ルーニーをセンターハーフとしても使うようになった。

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