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ペップはシティを“バルサ化”するのか? 円環する“アヤックス・スタイル”の系譜

2016-17シーズンより、ペップ・グアルディオラがマンチェスター・シティの監督に就任することが発表された。カタルーニャ人監督は、マンチェスター・シティに“バルサのサッカー”を持ち込むのだろうか。“アヤックス・スタイル”としても知られるこのサッカーだが、実はその源流は英国にあった。

text by 西部謙司 photo by Getty Images

バイエルンをバイエルン化したグアルディオラ

マンチェスター・シティの監督就任が発表されたジョゼップ・グアルディオラ【写真:Getty Images】
マンチェスター・シティの監督就任が発表されたジョゼップ・グアルディオラ【写真:Getty Images】

 グアルディオラはバイエルンをバイエルン化した。それ以前にバルセロナをバルセロナ化したように。だからこそ、世界一の監督と絶賛される。

 ペップがバイエルンに着任したとき、バイエルンがバルセロナ化されるのではないかと危惧されていた。しかし、3シーズン目の今季、バイエルンはよりバイエルンらしくなっている。4-4-2のフォーメーション、ハイクロスを使ったゴールへのアプローチなど、紛れもなくバイエルンであってバルセロナではない。

 バルセロナで「これぞバルサだ」と、ファンが納得するサッカーを作り上げたように、ミュンヘンでも実にバイエルンなチームに到達したわけだ。

 ところが、「これぞバルサ」「いかにもバイエルン」と言いながら、そんなバルサやバイエルンを過去に見たことのある人などいない。

 バルセロナの監督時代、ペップはバルサのサッカーを「ラファエロ」にたとえた。ルネサンスの巨匠ラファエロは膨大な作品を遺したが、その多くは工房の弟子たちが仕上げたものだという。つまり、オリジナルをデザインしたのはヨハン・クライフであり、自分は「弟子」の一人にすぎないというわけだ。

 確かにアイデアはクライフ監督の90年代からあった。しかし、それが現実のものとなったのは20年を経たペップの時代である。イメージにすぎなかったサッカーが実現したとき、人々は「まさにバルサだ」と感じたのだが、それを見るのは実ははじめてだったのだ。

【次ページ】奇策による伝統回帰
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