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「正当ではない結果など欲しくもない」。異端の監督、パコ・ヘメスの気高き魂【超攻撃的フットボールの美学】

シリーズ:超攻撃的フットボールの美学 text by 江間慎一郎 photo by Shinichiro Ema, Getty Images

最もスピードがあるのはシャビ・エルナンデス

パコ・ヘメスが理想的な選手と評したシャビ
パコ・ヘメスが理想的な選手と評したシャビ【写真:Getty Images】

――足ではなく、頭の回転の速さ。

P 足の速い選手はもちろん素晴らしいが、頭の回転が速い方がずっと大切だ。理想的な選手を挙げるとすれば、シャビ・エルナンデス一択だね。フィジカル的にはまったくスピーディーではないが、自分にとっては世界で最もスピードのある選手だよ。彼はほかの選手には不可能な速度でピッチ上の情報を処理でき、誰も対応できない次の一手を打てる。

 頭の回転が速い選手というのは、そうしてチーム全体のプレースピードを増すことが可能なんだ。そして、その後に実行するトランジションで必要となるのが、フィジカルのドン、つまりは足の速い選手となる。

――ではグアルディオラのバルセロナは、シャビ、アンドレス・イニエスタ、リオネル・メッシといった才能なしでも、あのような偉業を達成できたと思いますか?

P あのような次元の話であればノーだね。例えばアトレティコは良いパフォーマンスを見せているが、耽美的な観点からするとまったく美しくない。だがグアルディオラのバルサは良いパフォーマンスを見せ、結果を手にし、なおかつ美しかった。それはメッシ、シャビ、イニエスタのほか、最高のレベルにあったペドロ・ロドリゲス、カルレス・プジョール、ジェラール・ピケらなくしては成り立たなかったはずだ。

 美しいプレーを見せながら結果を収めるためには、稀有な才能を有する選手たちが絶対的に必要となり、グアルディオラはその幸運を手にしていた。一方ラージョであれば、多くの試合で良いパフォーマンスを見せられ、美しさもある。しかし負けてしまうんだよ(笑)。

 人々からはみっともないパフォーマンスでも勝たなくてはならないと文句を言われるが、私の考えは異なる。ほかのチームであれば、勝利のために美しさなど必要ないのかもしれないが、ラージョは逆であるべきなんだ。チームは美しさがなければ負ける運命にあり、あったとしても同様に土をつけられる。それでも美しくある方が、より勝利を重ねていける。それが私の率いるチームなわけだ。

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