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巨額放映権収入で問われるJリーグのビジョン。2ステージ制猛反発の過ちを繰り返してはならない

text by 植田路生 photo by editorial staff

状況を一変させる巨額マネーの流入

ダゾーン
【写真:編集部】

「Jリーグ放映権2000億円」

 7月20日、日本経済新聞が朝刊一面で打ったこの見出しに、サッカー界は揺れた(登録者のみが閲覧できる電子版は数時間早く、深夜から騒動になっていた)。その前日の19日にJリーグは記者会見を開き、「放映権に関して今お話できることはない」と村井満チェアマンが明言していたのだ。

 また、私を含め当件を追う者は、関係者などの取材から年100~150億円という情報を得ていた。総額までほぼ正確に割り出したメディアはそれまでなかった。20日午前に公式の発表記者会見を開いたJリーグは冒頭で「なにぶん急だったもので…」と広報が漏らしており、日経新聞が完璧な形ですっぱ抜いたのは間違いない。あまりに正確すぎる内容だった故、憶測報道の過熱を防ぐために媒体を選んで情報がリークされたとも思えなくもないが。

 放映権の取得者は英・ロンドンに本社を置くパフォームグループ。既存のスカパー!、ソフトバンクと争っていたが、最終的には金額面で一番有利な条件を提示したパフォームが勝利した。同社は動画配信大手のグローバル企業で、「DAZN(ダ・ゾーン)」というオンデマンドサービスでJリーグ中継は配信されることになる。契約期間は2017年から10年間。正式発表では総額2100億円となっていた。

 これまでJリーグの放映権料は約50億円(年)で、そのうちスカパー!は約30億円と推定されている。残りは地上波・BS放送によるもの。今回、パフォームとの契約は有料放送に限定されている。ということは、年単位では150~170億円程度の増収が見込まれるのだ。

 2100億円という文字通り桁が違う額は、停滞感漂うJリーグの起爆剤になることは間違いない。分配金の増額か、有名選手の獲得資金か、スタジアム整備など環境面への投資か、あるいは――。

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