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好調リバプールに浸透する“クロップ・イズム”。現地記者が見た“兄貴分”の人心掌握術とは

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images

現地記者が見るクロップのマンマネジメント術

ロジャース
昨季解任された前任者のブレンダン・ロジャース氏【写真:Getty Images】

 クロップ就任直後に地元紙『リバプール・エコー』でリバプール番を務めるジェームズ・ピアース記者と話をした時のことを思い出す。

「今季はおそらくダメだろうが、来季以降が楽しみだ。リバプールファンの多くもそう考えている。よくてFAカップかリーグカップを取れる程度で、来季、いやその翌シーズンに真価が発揮できるんじゃないかな、ってね」

 彼の話した展開と非常に近いものになっている。そんな同記者に、今季のチーム好調について聞いてみた。「クラブに来てまだ13~14ヶ月だが、クロップ政権とロジャースとのときでは雰囲気がまるで違う。クラブの全エリアでインパクトを残しているのがクロップで、逆にロジャースは、彼の政権の後半が特にそうだったが、常に切羽詰まったギスギス感があったんだ。虚勢を張っているというか、どこか自信がなさそうでね。経験の違いかもしれないが…」と、クロップとロジャースがクラブに与える影響の違いを説明してくれた。

 そしてこう続けた。「クロップは毅然とした態度で、決断力や実行力などロジャースを大きく上回る器の存在。経営陣もクロップの力を認めたうえで連れてきたはずだが、ここまで優秀な監督とは知らなかったはず。現在はクラブのすべての面でオーソリティーと威信が感じさせられる。本人も何かあった場合には『すべての責任を負う』と常に話をしている」。この男らしさがサポーター、さらに経営陣を含めたクラブ関係者すべてが絶大の信頼を置く理由でもあるという。

 確かに悪いときは悪い、良い時は良いというのがクロップ流で、表裏がない性格のようだ。記者会見でもそうだが、ユーモアのセンスがあり機知に富んだコメントは、聞いているものを楽しくさせてくれる。

 それはピッチ上やロッカールームでも同じだ。彼の根幹にあるのはポジティブなメンタリティーで、それがチームの士気向上にもつながっている。同時に、シリアスな場面ではしっかりと話をして相手を納得させる。すなわち、ピアーズ記者が話していたオーソリティーや威信だ。

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